上司に𠮟責されても反省の色はなし(まるいがんもさん提供)
上司に𠮟責されても反省の色はなし(まるいがんもさん提供)

どんな職場にも、「やる気がない社員」は少なからずいるものです。しかし、ふとした出来事をきっかけに、そんな社員が驚くほど前向きに変わるかもしれません。そうした変化をリアルに描いた漫画『モンスター社員が改心した意外なキッカケ』(作・まるいがんもさん)が、今SNSで話題を集めています。

舞台は、ある会社の一部署。雑田宏(ざつた・ひろし)は、いつものらりくらりと仕事をやり過ごす社員です。自分のミスで同僚の真締真一(まじめ・しんいち)が取引先から叱られても、どこか他人事の様子でした。

同僚の柔木美和(やわらぎ・みわ)は、雑田に対して「あの意識の低さはちょっとやばいで」「お金をもらって働いてるって意識が圧倒的に足らん」とあきれ気味です。

そんな中、雑田はついに大きな失敗をしてしまい、上司から厳しく叱責されます。柔木たちは「ついにその時が来たか…」とため息をつくのでした。

しかし当の雑田は反省する様子もなく、「念押しで確認してくれないクライアントも悪い」「どうでもいいか、めんどくせぇなぁ」とぼやくばかりです。

そんなある日、柔木と真締は上司から雑田の仕事を手伝うように言われます。任されたのは、売り出し中の若手女優・倉橋夢子(くらはし・ゆめこ)の撮影現場の手伝いでした。

撮影当日になり、現場である夜景が美しいレストランに雑田たち3人は向かいます。夜景を見て柔木が「夢子ちゃん、似合うやろなぁ」と話していると、そこへ素朴な雰囲気の若い女性が現れました。

雑田と柔木はマネージャーかメイク担当だと思い込み、軽く挨拶を交わします。その女性は少しドジな様子で、椅子につまずいたりと頼りない印象です。

すると男性スタッフが現れ、「お疲れ様です、マネージャーの田代です。あっ、夢子ももう来てたんだね?」と声をかけます。その言葉に全員がハッとし、先ほどの女性こそ倉橋夢子本人だと知るのでした。

慌てて「し、失礼しました!」と頭を下げる雑田たちでしたが、田代は笑いながら「すっぴんでオフモードのときは、分からないですよね」と気にする様子もありません。

その後、撮影準備が進み、メイクを終えた夢子が戻ってくると、そこにいたのはまさにテレビで見る女優の姿でした。

立ち居振る舞いから目の輝きまで一変した彼女を前に、3人は思わず「すごいですね…」と息をのみます。

さらに、「本番入りますー」の声がかかると、夢子の表情が一瞬で切り替わります。まるでスイッチが入ったように、プロとしてのオーラをまとった彼女の姿に、雑田たちは圧倒されます。

次々とカメラマンの要望に応えていく夢子の集中力と存在感に、3人は「えっ!?すごくね!?」「一瞬で女優になりましたね!」と興奮を隠せません。

撮影が無事に終わると、柔木は「いやぁ、あれがプロの仕事やで」としみじみ語ります。その言葉を聞きながら、雑田は静かに何か考えているのでした。

数日後、会社で真締に「ちょっとこれ、抜け漏れないかチェックしてほしいんだが」と声をかける雑田の姿がありました。

驚いた柔木が「どうしたんですか? 今までそんなこと言ったことないのに」と尋ねると、雑田は「別に……」とつぶやくだけです。

柔木が「こないだの夢子ちゃんの影響ですか?」と笑うと、「うるせー、うるせー」と照れくさそうに返します。

あの撮影以来、雑田はすっかり夢子のファンになり、彼女が出演するドラマを欠かさず見るようになっていたのでした。

こちらの漫画は東洋経済オンラインにて連載中のオリジナル漫画『真面目なマジメな真締くん』からの抜粋です。そんな同作について、作者のまるいがんもさんに話を聞きました。

▽プロってすげぇ…と驚いた記憶はずっとありました

ー同作は経験談が元になっているとのことですが、具体的なエピソードを教えてください。

19歳のころだったと思います。当時僕はデザイン系の専門学校に通っていました。ある時、その先生から一日だけアシスタントのバイトをしないかと誘われて、もちろんお受けした時の話です。

朝早く先生のスタジオで待機していると、一人の女性がやってきました。正直、僕にはその女優さんが普通の女性に見えました。しかし、とあるバーでの撮影中、バッチリメイクをしてドレスアップした女優さんは別人と見違えるように変身。

そして撮影が始まった瞬間、スイッチが入ったようにポーズを取ったり表情を作ったりする女優さんはめちゃくちゃ輝いて見えたんです。その時にプロってすげぇ…と驚いた記憶はずっとありました。そして真締くんのマンガのネタを考えている時にあの時のことを描こう…となったわけです。

ーまるいがんもさんが「プロの仕事」として心がけておられることはありますか?

今現在は正直、特にないかもしれません…。過去は会社の仕事もマンガも締切を守るということを強く意識していましたが、最近はちょっとダメダメで…。プロ失格です…。プロになれるよう頑張ります。

ーそれぞれキャラクターにはモデルがいるのでしょうか?

柔木さんはモデルがいませんが、真締くんはモデルがいます。その方は会社の関係の方で個性的で個人的にすごく好きな方です。勝手にモデルにさせてもらっています。

ーまるいがんもさんご自身がファンの人はいますか?

僕は人間的にはブラフマンのTOSHI-LOWさんがずっとかっこいい…と思っていて、あんなふうになれたらなと憧れています。それとライフスタイル的には雑誌OCEANSのモデルの三浦理志さんですね。釣りをしたり、サーフィンしたり農業したりと、かっこいいのと生き方もとても憧れていて真似していこうと思ってます。

(海川 まこと/漫画収集家)