長い期間熱心に就職活動に取り組んで、誰もが知っている大手企業からいくつか内定をもらい、その中から給与も福利厚生もいちばん良い会社に納得して入社した自慢の我が子が、数年も経たないうちに「会社辞めたい」と言い出したら、止めますか?それとも何も言わずに新しい道を応援しますか?
そんなどちらが「正解」なのか判断が難しい「子どもの早期離職」について、親の本音を聞いてきました。
■順調に就活成功したはずなのに「仕事に飽きた。このままでは成長できない」
Aさん(関東在住、50代、主婦)は新卒からずっと同じ大手メーカーに勤める夫と、1年前に大学を卒業し、大手IT企業に入社した長女Bさんとの3人家族です。
Bさんは子どもの頃から要領のよいタイプで、生徒会や部活動をそつなくこなし、大学推薦枠が多いと定評ある私立高校に入学。定期テストにもこつこつ取り組んで、自宅から通えるいちばん偏差値の高い大学の人気学部の指定校推薦を勝ち取るなど、親から見ても「心配の必要がないタイプ」だったそうです。
そんなBさんは大学入学後もアルバイトやボランティア、短期の語学留学など充実した毎日を過ごしつつ、まだ大学3年生になったばかりの頃から熱心に就職活動に取り組みました。
「せっかくの新卒カードなんだから、しっかり企業選びして、ホワイトな会社に入社しなきゃ」と何人ものOB訪問をした甲斐もあり、人気企業ランキングに載る会社から3社の内定を得て、初任給と年間休日の条件が最もよく、基本的に転勤もないという好条件だったIT業界の大手に入社を決めたのだそうです。
希望通り自宅から通える本社配属となり、これで順風満帆とすっかり安心していたAさん夫妻が突然驚かされたのは、入社して3年経った春のことでした。
「転職しようと思って、転職エージェントにも登録してみたけど正直就活より大変。時間作るために先に会社辞めてもいいかなと思ってるんだけど」
■親世代から見ればホワイト企業にしか見えないけれど……
土日祝日はしっかり休み、ボーナスも平均以上で、同僚や上司も優しいと言ってたのになぜ?と聞いてみると、驚きの答えが返ってきました。
「研修が終わって、部署に配属されてから、自分が成長している感じがしない。先輩を見ていても、やりがいをもって仕事をしてる感じがないし、AIがどんどん発展していくのにIT業界って将来不安じゃない?」
「入社して数年なんて、まだまだ雑用で仕事を覚える時期で成長を感じられるような華々しい仕事なんてどの会社に入っても担当させてもらえないのは当たり前」と言って夫と説得を試みたそうですが、それならスタートアップも視野に入れるとあっさり退職届を出して転職活動中とのこと。
「内定はいくつかもらったみたいなんですが、どこも決め手に欠けるみたいで。正直娘の言う『いい会社』がまったくわからないので、アドバイスのしようもありません。娘の言うのはわがまますぎると思ってしまうのが正直なところですが、そういうものでしょうか…」
誰もが感じられる「成長実感」はないだけに、判断が難しいですね…。
■入社3年目、なんで会社を辞めたくなるの?
リクルートマネジメントソリューションズが実施した「若手・中堅社員の組織適応に関する現状把握調査(2025)」によると、若手視野員の離職意向が高まる時期は3年目と5~7年目。
仕事の内容や幅を自ら広げようとする行動は、「3年目」と「5~7年目」が低いという結果もあり、この時期のサポートが求められているようです。
【参考】
▽株式会社リクルートマネジメントソリューションズ-「若手・中堅社員の組織適応に関する現状把握調査(2025)」
◆沼田 絵美(ぬまた・えみ)人材業界や大学キャリアセンター相談業務などに20年以上携わる国家資格キャリアコンサルタント。
























