営業先へ向かうため運転する上司。部下に運転の交代をお願いしたらパワハラ? ※画像はイメージです(Peak River/stock.adobe.com)
営業先へ向かうため運転する上司。部下に運転の交代をお願いしたらパワハラ? ※画像はイメージです(Peak River/stock.adobe.com)

営業職のAさん(50代男性)は、新人のBさん(20代男性)と社用車で取引先を回っていました。高速道路を使う車移動があることは、入社時に説明済みです。夕方、別の顧客から急ぎの電話が入ったため、Aさんは安全面を考慮し、Bさんに「電話をするので運転を代わってほしい」と依頼しました。

ところがBさんは「高速道路の運転に慣れていない」「今日は運転するとは聞いていない」として、その依頼を断ります。Aさんは無理に求めることなく、そのまま自分で運転を続けました。

しかし翌日、上司から「Bくんが『突然運転を命じられて精神的苦痛を受けた。ハラスメントだ』と訴えている」と伝えられます。Aさんは、これがハラスメントに当たるのか理解できず、困惑してしまいました。

実際、出張や営業中の運転依頼は、ハラスメントに該当するのでしょうか。社労士の小島朋子さんに話を聞きました。

■世代間の違いを否定するのではなく、活かす視点を持つ

ー出張中や営業中に、先輩社員が後輩社員に運転を依頼する行為は、ハラスメントに該当する可能性がありますか?

パワーハラスメントとは、
1.優越的な関係を背景とした言動で
2.業務上必要かつ相当な範囲を超え
3.就業環境を害するもの
という3つの要件を全て満たす場合に認定されます。

このケースでは、新人社員は入社時に「営業の仕事で高速道路を使った車移動がある」ことについて説明を受けており、業務として想定範囲内だったと考えられます。

依頼内容も業務上の必要性が高く、就業環境を著しく害したとまでは言えないため、ハラスメントに該当しない可能性が高いでしょう。

ー「運転するとは聞いていなかった」「高速道路の運転に不慣れ」といった理由で運転を拒否された場合、どのように対応すべきでしょうか?

運転が必要となる日をなるべく事前に伝え、臨時で運転を依頼せざるを得ないケースがあることもあらかじめ説明します。その後、同乗指導や運転研修を実施しても運転を拒否する場合には、配置転換や就業規則に基づく指導を慎重に検討することになります。

ー近年、若手社員と上司・先輩社員の間で、運転をめぐるトラブルは実際に起きているのでしょうか。

通勤や私用の送迎を一方的に命じられる「運転強要パワハラ」などあるようですが、いじめや嫌がらせのご相談が多いです。

ーこのケース以外にも、若手とベテランの間で起こりやすい働き方をめぐるギャップには、どのようなものがありますか?

労働時間と働き方に対する価値観の違いや、「我慢して続けるのが当たり前」という考えと、「合わなければ辞めるのも一つの手段」という考えの違いが、評価や指導の場面で衝突を生むことがあるのではないでしょうか。

世代間の違いは、時に新しいアイデアや価値を生み出す源にもなります。違いを否定するのではなく、活かす視点を持つことが、組織の多様性と創造性を高める鍵となります。

◆小島朋子(こじま ともこ)社会保険労務士/社会保険労務士事務所ホライズン代表
千葉県を拠点に活動する社会保険労務士です。障害年金の代理請求を中心に、法人向けには労務に関する各種ご相談、給与計算業務や給与ソフトの導入・設定確認を承っております。会社と人との良好な関係を築くためのサポートをいたします。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)