「音楽はスマホで聴くもの」と定着した現代、一見時代に逆行するような『アナログレコード』市場が異例の活況を見せています。
その人気は日本だけにとどまらず、世界中にもブームを巻き起こし、『懐かしのアイテム』の枠を超えた社会現象となっています。ではなぜ、レコードが世界中で求められているのでしょうか。日本国内でレコードの製造および印刷を行っている、東洋化成株式会社に話を聞きました。
■レコードは『体験感』が強いことが大きな特徴
─近年レコード人気が再燃していると言われますが、実際に発注は増えているのでしょうか
レコード人気の高まりとともに、発注数も年々増え続けている状況で、ここ15~16年は好調に推移しております。
具体的な数値でいうと、年間製造枚数としては2023年には日本国内で約269万枚(前年比126%)、2024年には約315万枚(前年比17%)と増加傾向で、最も落ち込んだ2009年頃の約10万枚に比べると30倍以上でございます。
─なぜこれほどまでにレコードの人気が再燃していると分析されていますか
いくつか理由があるかと思いますが、一番大きな理由としては現代において音楽産業自体、データ配信(サブスク)が主流となっていることが関係していると思います。
音楽産業は、よくサブスクとフィジカルの対立構造として取り上げられます。日常の音楽体験自体が『データ配信』を主流としているため、アナログレコードなどのフィジカルが売れなくなっていると言われがちです。しかし実際の数字を見てみると、音楽配信サービスが始まった2016年以降、比例する形でアナログレコードの製造枚数も増えています。
つまり音楽体験はデータ配信が主流であるからこそ、そのカウンターとして『実物を所有したい』という需要が生まれていると考えられます。
特にフィジカルの中でもアナログレコードは、『CDよりもサイズが大きくジャケットのアートワークを十分に楽しめる』『レコード特有の温かな音』『再生には手間がかかる(レコードプレイヤーやアンプが必要)』と大きな特徴があります。
そのため”体験”感が強い、など時代に逆行するからこその魅力があるため、ここまで長いブームが続いているのだと思います。
実際に、2000年前後の時期にも突発的なレコードブームが起こったこともありますが、一時的な流行りとして数年も経たずにブームが収束することとなりました。その後アナログレコードは、CDに完全に取って変わられる形となりました。
─現場から見て、これからのレコード文化はどうなっていきそうでしょうか
アナログレコードは、2020年代以降も『一つの音楽体験』として改めて定着していくのではないかと思います。
アナログレコードの歴史自体は長く、100年以上も続いているわけですから、今後も完全にその存在自体が無くなるというわけではなく、その時代にあった形で需要は残っていくのではないかと信じたいです。
◆東洋化成株式会社(とうようかせいかぶしきがいしゃ) 1959年設立の老舗レコード会社。アナログレコード一筋で、60年以上レコードの製造やレコードジャケットの印刷を行っている。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)























