上司からのおじさん構文メール…正直困る ※画像はイメージです(とりすたー/photoAC)
上司からのおじさん構文メール…正直困る ※画像はイメージです(とりすたー/photoAC)

50代の男性Aさんは、課長としていつも部下が頑張りすぎないか心配しています。そんなある日、若手女性社員の1人が20時まで残業している姿を見たAさんは「今日も一日お疲れ様!!〇〇チャンは頑張り屋さんだから心配だな!あんまり無理しすぎないでね!美味しいものでも食べて、明日も元気に行こう!」と仕事終わりの労いの意味を込めたメールを送ります。

部下から感謝のメールが届くことを期待していたAさんでしたが、翌朝になってもそのメールには既読マークすらつきません。もしかしたらメールを見る暇さえない程忙しくしているのかと心配になったAさんは、数日空けてもう1通メールを送ってみました。しかしこれにも既読マークがつきません。

もしかして何か悩みを抱えているのではと気になったAさんは、思い切って職場で話しかけます。すると彼女はAさんに向かって「あの不気味なメールは何ですか!あんなこと言われても怖いです!」と怒られてしまうのでした。

部下とそれなりに信頼関係を築いていたと思っていたAさんは、ここでメールの文章が悪かったことに気付き、今まで部下に送ってきたメールを思い出して呆然とするのでした。

Aさんのメール文はどこがいけなかったのでしょうか。また彼が実施すべき改善策はあるのでしょうか。心理カウンセラーの吉野麻衣子さんに聞きました。

■もっとも危険なのはニックネーム+絵文字

-即ブロックの対象になるおじさん構文のメール文は何でしょうか?具体的な改善策と一緒に教えてください。

「おじさん構文」がブロックを招く根本原因は、文章技術の問題ではありません。「自分がどう見られているか」を客観的に把握できていない、<メタ認知能力>の欠如にあります。私はこれまで数千件のメールを一文字単位で添削してきましたが、即ブロックにつながるメッセージには共通のパターンがあります。感情論ではなく、脳科学・心理学の視点から解説します。

もっとも悪い点は、ニックネーム+絵文字の過剰な親密演出です。「チャン付け」(更にカタカナ)や絵文字の連打は、送り手が意識しているかどうかにかかわらず、受け手に"距離感の侵害"として認識されます。

進化心理学的に見ると、人間は相手との関係性と言語スタイルの乖離を本能的に察知します。職場の上司という立場でありながら、同世代の友人に送るような砕けたトーンのメッセージを受け取った部下の脳は、「この人は自分との距離感を誤認識し、何らかの見えない恐怖の親密関係を作りたがっている」とアラートを発します。これが不快感・警戒感の正体です。

次に悪いのは、一方的な感情の押しつけや過剰な心配です。具体的には「頑張り屋さんだから心配だな」というようなメッセージです。一見、思いやりからくるメッセージに見えますが、これは「相手の感情状態を勝手に断定し、自分の不安を相手に処理させている」構造です。

臨床心理学では、過剰な心配は相手の自律性を否定するメッセージとして受け取られることがあります。これにより受け取った相手は「あなたの不安を解消する義務」を無意識に課されてしまうのです。上司からのメッセージであれば、なおさら「返さなければ」というプレッシャーになり、最終的にはブロックという形での回避行動に至ります。

また、返信を前提とした長文・連投メッセージも控えるべきです。長文のメッセージは、送り手にとっての「誠意の表れ」でも、受け手にとっては「返信コストの高い要求」として機能します。特に既読がつかない状況での追撃メッセージは、相手の脳に「逃げられない」という認知的拘束感を生じさせ、「粘着質かつ、つきまとい行為(ストーキング)的恐怖」を与えます。

これは行動心理学でいう相手から何か受け取ったときにはお返しをしなければ申し訳ないと感じる「返報性の原理」の歪んだ応用であり、関係性の非対称な強制につながります。

-これらの具体的な改善策はありますか?

まず、自分のメッセージを送信前に一度見返し、「自分と感覚・距離が違う相手はこれを読んでどう感じるか」と第三者の目線を想像しながら確認する習慣をつけてください。呼び方は「〇〇さん」を基本とし、絵文字は最大1~2個、かつ文脈に合ったものに絞るだけで、受け手の心理的安全性は大きく変わります。

また、「私はこう感じている」という自分起点の文章から、「相手が自由に受け取れる」表現へシフトしましょう。自分を変える必要はありません。見せ方を変えるだけで、同じ気遣いでも受け手の印象は180度変わります。

それと重要なのがメールは「短く、返しやすく」が鉄則です。1メッセージにつき1テーマ、2~3行以内を意識してください。既読がつかない場合は追加送信を絶対に避けること。「返信しなくていいですよ」という一文を添えるだけで、相手の心理的負担は激減します。

◆吉野麻衣子(よしの・まいこ) 株式会社SMARTBRIDAL代表取締役社長/MBAホルダー/恋愛婚活心理学者/モデル
結婚相談所SMART BRIDAL代表として、「MBA(経営学)・心理学・AI・オンライン」を融合させた科学的根拠に基づく戦略的婚活をサポートしている。「離婚しない幸せな結婚」を理念に掲げ、どの様な境遇の方でも幸せな結婚が出来るように、多くの方を幸せな結婚に導いている。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)