私立の中高一貫校に子どもを通わせていると、想像以上に「保護者の集まり」が多いものです。中でも負担感が大きいのが、クラス役員主催の担任を囲む懇親会です。建前は情報交換と親睦ですが、参加する側の事情によっては、楽しいどころか緊張の連続になります。
■年3回開催、3時間飲み放題--交流の場がプレッシャーになるとき
神奈川県在住Kさん(40代)の次男は、絵にかいたような中学生男子らしい「雑さ」をフル装備したタイプです。忘れ物、提出物の遅れ、授業態度などについて、定期的に担任の先生から電話をいただきます。そして成績が特別良いわけでもありません。着信画面に学校名が表示されるたび、Kさんの背筋は自然と伸び、心臓は高鳴ります。そんな状況で「担任も出席されます」という懇親会に、気軽な気持ちで行けるはずがありません。
■悪い話しかない保護者の席は、想像以上に居心地が悪い
会場は駅前の少し良い居酒屋で、会費は毎回5千円前後。3時間飲み放題が標準設定です。開始から終了まできっちりフルタイムで役員が進行します。Kさんは、そもそもお酒が強くありません。緊張している場ではなおさら酔えません。「飲めば気が楽になる」という逃げ道も使えないのです。
開始30分もすると、役員がイベントを始めます。「それでは、皆さんに我が子の良いところを発表していただきます!」次々に繰り広げられる「わが子トーク」です。部活でレギュラーを取った話、英検やコンテストの成果、先生に褒められたエピソード。皆さんが胸を張って語れる内容です。話題は見事なまでに明るい報告で統一されています。
Kさんの次男は、どうかと言えば、担任からの連絡内容はだいたい注意や指導の連絡です。「うちの子、最近どうですか?」と先生に質問すると、「まだまだかわいいほうですよ」と返されます。先生が言葉を探している様子が伝わり、心拍数が上がります。褒められ話の輪に入るカードが、一枚も手元にない状態です。
■出たい気持ち半分、逃げたい気持ち半分という板挟み
欠席すれば楽なのはわかっています。ただ、完全に行かないのも気が引けます。他の保護者と話す機会は貴重ですし、学校の空気感もわかります。参加していれば安心できる、という側面もあります。
一方で、「また大変ご迷惑をおかけしています」と心の中で先回りして頭を下げている自分がいます。誰もそこまで気にしていないとわかっていても、当事者の親の心理は複雑です。
さらに悩ましいのは、主催の幹事の方が非常に熱心なことです。「次はぜひ全員参加で」と笑顔で言われると、断る理由が薄くなります。断るほどの事情はない。しかし気持ちは重い。この中途半端な立場が、じわじわと効いてきます。
■親の評価と子どもの評価は、必ずしも連動しない
何度か参加して気づいたことがあります。懇親会での印象と、子どもの学校生活の実態は、必ずしも一致しません。目に見える成果がある子にも苦労がありますし、目立つ実績がない子にも、その子なりの良さがあります。ところが懇親会は「発表しやすい成果」が中心になるため、どうしても話題が偏ります。
問題児と呼ばれても、家ではよく笑い、よく食べ、よく話す大切な存在です。ただ、保護者の集まりでは、その魅力は数値にも実績にもなりません。
グラスが進まないまま3時間が過ぎ、帰り道にどっと疲れが出ます。それでも次の案内は、また届きます。学校生活は、子どもだけのものではありません。親にもまた、静かな修行の時間が与えられているようです。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)
























