この20年で人々の時間の感覚はどのように変化したのか ※画像はイメージです(Trickster*/stock.adobe.com)
この20年で人々の時間の感覚はどのように変化したのか ※画像はイメージです(Trickster*/stock.adobe.com)

「未明」や「朝イチ」、「ちょっと一杯」など、日常やビジネスでよく使われるものの、人によって捉え方が異なる曖昧な“時間語”。働き方の多様化やスマートフォンの普及が進む現代において、人々の時間の感覚はどのように変化しているのでしょうか。

シチズン時計株式会社(東京都西東京市)が実施した「時間感覚」に関する意識調査では、2026年の最新データに加えて、2006年(20年前)の同調査との比較から、その変遷を浮き彫りにしています。

調査は、全国の20~50代以上のビジネスパーソン(給与所得者)400人を対象として、2026年4月にインターネットで実施されました。

「時(とき)に関する言葉の感覚」について調べたところ、「未明」では平均で「0時54分頃~3時06分頃」となり、2006年(1時24分~4時12分)と比べると、開始は約30分、終了は約1時間早まり、辞書的な意味(夜がまだ明けきらない時)を超えて、現代人の感覚では「日付変更直後の時間帯」へと認識がシフトしています。

年代別では、20代(0時42分)、30代(0時36分)、40代(0時48分)と、いずれも深夜1時前を起点と捉える傾向が強く、幅広い世代で前倒し傾向が見られた一方で、50代以上は「1時24分頃」からと相対的に遅く、“従来型の深夜イメージ”に近い認識が残っているようです。

広辞苑では「あさはやいうち」とされている「早朝」は、「4時42分頃~6時42分頃」という結果でした。2006年(4時36分~6時24分)と比べても大きな変化はなく、現代において最も安定した時間語と言えます。

「日が暮れて、まもない時」とされる「宵の口」では「18~20時」(22.5%)が最多となったものの、「15~17時」(21.3%)や「21~23時」(21.3%)も同程度で、「0~11時(深夜~朝)」とする回答も3割超にのぼり、最も曖昧化が進んでいる言葉です。

年代別では、20代は「15~17時」(26.0%)が比較的高く“夕方寄り”、40代は「18~20時」(27.0%)や「21~23時」(25.0%)が高く“夜寄り”の傾向が見られました。また、40代・50代では「0時~5時(深夜~早朝)」も2割超となり、世代によって解釈の幅が広がる結果となりました。

「真のよなか。深夜」とされる「真夜中」は、「23時18分頃~2時00分頃」となり、2006年(23時42分~2時18分)と比べると、始まり・終わりともにやや早まりました。特に20代・30代では、始まりが「23時12分頃」と、“日付が変わる少し前から真夜中”と感じる傾向が強まっています。

「夜更かし」と感じる基準は「23時54分以降」となりました。2006年(0時12分以降)と比べると、全体としてやや前倒しとなっています。

特に20代は「0時18分」と最も遅く、年代が上がるほど“日付変更前”から夜更かしと感じる傾向が強く見られました。生活リズムや就寝意識の変化により、“夜遅い”と感じる時間帯が全体的に早まっていると考えられます。

かつては「日付をまたいで深夜0時を過ぎて帰宅すること」を指した「午前様」は、「3時48分以降」という結果になり、2006年(1時18分以降)から約2時間半後ろ倒しされました。

特に20代(5時48分)や30代(4時42分)の若い世代ほど始発時間帯に近い帰宅を「午前様」と認識する傾向が見られ、もはや終電帰宅ではなく、「始発が動き出す時間帯の帰宅」や「朝帰り」に近い概念として捉えられていることが分かります。

その「朝帰り」は「5時12分頃~7時36分頃」で、2006年(4時24分~7時18分)と比べると、こちらも後ろ倒しに。

特に40代は「5時30分頃~8時00分頃」と、他の年代より遅めの時間帯を「朝帰り」と捉える傾向が見られ、全体としては“始発が動き出す時間帯から朝の通勤時間帯前後”が、現代における「朝帰り」の中心的な認識と言えそうです。

ビジネスで“朝イチでミーティング”などで使われる「朝イチ」は、「7時12分頃」となり、2006年(7時54分頃)と比べると、約40分早まっています。

ここでも20代が「6時42分」と最も早く、リモートワークやフレックスタイム制度の浸透など働き方の多様化を背景に、朝の時間の使い方そのものが変化している可能性がうかがえます。

■ビジネス・生活シーンの時間の長さ

「ビジネス・生活シーンの時間の長さ」についても調査を実施。

まず、「小一時間」は、「1時間」(47.0%)と「50分」(40.5%)に回答が集中し、約9割が「50分~1時間」と回答し、平均は「55.8分」と、2006年(53.5分)よりわずかに長くなりました。

残業などで使われる「ちょっと遅くなる」は「1時間」(60.3%)が最も多く、全体の約8割が「1時間~1時間30分」の範囲に収まり、平均は「78.8分」と、2006年(94.1分)から約15分短縮しています。

年代別では、20代(73.5分)・30代(74.4分)が短く、50代以上(86.1分)が長い結果となり、若者ほど残業の「ちょっと」を短く見積もる傾向が見られました。

電話などでよく使われる「少々お待ちください」では、「30秒」(38.3%)が最多となり、平均は「32.9秒」で、2006年(26.6秒)から約6秒増加。全体の約6割が「30秒~1分」を想定しており、“短時間なら待つ”という許容感覚が広がっているようです。

また、「折り返し電話」では、「10分後」(28.3%)が最多となった一方で、「30分後」(23.0%)や「1時間後」(12.8%)も一定数を占め、折り返しを待てる時間には幅があることがわかりました。平均は「20.1分」で、2006年(13.8分)から約6分延びています。

さらに、「すぐ対応します」では、「10分」(47.8%)が最多で、全体の約8割が「30分以内」を想定していました。一方で、「1時間」(8.0%)や「2時間」(2.0%)を想定する人も一定数存在し、平均は「24.1分」と、2006年(22.5分)よりやや長くなっています。

いずれも、チャットツールなどの普及により、「相手には相手の状況がある」「すぐには繋がらないこともある」という前提がビジネスパーソンの間に生まれたためと考えられます。

「軽く打ち合わせ」では、「15分」(32.8%)、「30分」(25.3%)、「10分」(22.0%)が上位となり、平均は「18.8分」と、2006年(22.4分)から約4分短縮しています。

全体の約6割が「15分以内」を選択しており、20代はさらに短く「17.6分」と最も短くなっています。オンライン会議やチャット文化、事前資料共有の定着などにより、打ち合わせの役割が“情報共有”から“確認・意思決定”へと変化していることも背景にあると考えられます。

「ちょっと一杯」は平均「79.2分」で2006年(78.9分)とほぼ同水準に。最も多かったのは「1時間」(43.5%)で、全体の約9割が「2時間以内」を想定しており、“軽く飲む=1時間超”という感覚は20年間ほぼ不変でした。

効率化が進むビジネスシーンとは対照的に、飲食の場では一定の時間を共有する価値観が維持されている様子がうかがえます。

また、「近いうち食事」については、「1カ月後」(49.0%)が最多に。一方で「実際にはしない」(18.0%)も一定数存在し、特に40代では「実際にはしない」が22.0%と最も高く、関係性を円滑にするための“言葉としての機能”が強く表れていると考えられます。

最後に、生活シーンにおいての調査では、「動画広告で『長い』と感じる時間」は、「30秒」(39.5%)が最も多く、平均は「28.2秒」でした。

しかし、普段から縦型の短尺動画に触れている20代や40代では「15秒でも長い」(いずれも26.0%)と感じる層が一定数存在し、コンテンツの消費スピードが上がっている影響が見られます。

LINEの返信が「遅い」と感じる時間については、「翌日まで」(30.3%)、「当日中」(27.3%)が上位を占め、約6割が「当日~翌日」を許容しています。

世代別に見ると、20代(38.0%)や30代(34.0%)で「翌日まで」というゆったりした回答が最多だったのに対し、40代・50代以上では「3時間以内」など即時の返信を求める割合が高いという、意外なギャップが明らかになりました。

待ち合わせでの「ちょっと遅れる」については、「10分」(43.5%)、「30分」(26.3%)が上位となり、平均は「20.9分」。“ちょっとの遅刻=10~20分前後”が中心的な感覚となっており、スマートフォンでリアルタイムに連絡が取れるようになったことで、遅刻そのものの長さよりも、事前連絡の有無が重視される傾向も背景にあると考えられます。

こうした曖昧な言葉が持つニュアンスの変化を理解しつつ、トラブルを防ぐためには「〇時まで」「〇分以内に」と具体的な数字でコミュニケーションを取ることが、タイパ時代を生きるビジネスパーソンにとって重要になりそうですね。