岐阜県の精肉店「肉のひぐち」(同店のスレッズ(@nikunohiguchi)から)
岐阜県の精肉店「肉のひぐち」(同店のスレッズ(@nikunohiguchi)から)

 岐阜県可児市の精肉店「肉のひぐち」が、SNSに顧客へのお願いを投稿し、ネット上で大きな話題になっています。

 「お客様にお願いです。本当にやめてください!!『少しだけでもいいですか?』『忙しいのにすみません』そんなふうに言ってくださる方がいます。遠慮なんてしないでください!100gでも、1枚でも、今日使う分だけでも。欲しい分だけ買えるのが精肉店の良いところです。気軽に声をかけていただけるのが嬉しいんです!今日のごはんにちょうどいい量、一緒にご用意させてください!」(投稿から引用)

 同店店長が9月2日、店のスレッズ(@nikunohiguchi)に投稿したところ、1.5万のいいねがつくほど拡散。ネット上の反応は「ハードルが高かったので安心した」「いい店だ」「近くだったら絶対に行きたい」など。一方で、他店での苦い経験を明かす人もおり、「精肉店は高級なイメージ」「他店で露骨に嫌な顔をされたことがある」「別の店で少ない量を断られて以来、街の精肉店はトラウマに…」といった声も寄せられました。

■少量での注文客、実際にいるの?

 同店の対面ショーケースには、ブランド牛の飛騨牛や岐阜県産のブランド豚ボーノポーク、国産若鶏など、約50種類の商品が並びます。一例では、飛騨牛A5等級ロースすき焼き1590円、飛騨牛角切り430円、ボーノポークロース肉しゃぶしゃぶ302円、国産若鶏もも肉180円、国産手羽元98円など(いずれも100g、税込み、日によって価格は変動の可能性あり)。

 同店店長に話を聞きました。

──投稿が拡散しました。

 「自分達が考えていた以上に、お肉の量に不安を感じていらっしゃるお客さまが多いことが分かりました。『少量で申し訳ない』『離乳食を作りたいから鶏ミンチ100gだけ欲しい』『家族の人数が少ないので少量しか必要でない』など、本当にいろいろな声がありました」

──投稿しようと思ったきっかけは。

 「町のお肉屋さんが減る中、古き良き日本の人情味あふれる文化まで失われつつあることに寂しさを覚えていました。店には親子3世代で通ってくださるお客さまもいて、『小さな頃に母に買ってもらうコロッケが好きでした』といったお声も多く寄せられます。買い物の経験が思い出になっていることは尊く、あらためて誇らしい仕事だと感じています。そんなお客さまを増やしたいと思ったことがきっかけです」

──実際に、少量を注文するお客さまはいますか。

 「100gのご注文はよく受けています。ミンチ50gだったり、いろいろな部位を食べたいので3枚ずつ入れて欲しい、冷凍したいので鶏もも1枚ずつ入れてくださいなども。核家族化など、世の中の変化に敏感に対応していくことも大事だと感じています」

■「ハードルが高かった」「高級なイメージ」の声には

──ハードルが高くて行けないといった声もありました。

 「もっと気軽な場所でありたいです。買うものが決まってなくても、『今日は何にする?』『この肉ならこう料理するとおいしいよ』など、会話をしながら決めることもできます。精肉店だからできる会話を大切にしたいです」

──今回の投稿後、接客への思いに変化は。

 「これからはもっとこちらからお声がけしていきたいです。もし迷われていたら『200gで一度お見せしますね』『10本だと何gになりますよ』など、積極的にやっていきたいです。スーパーに行けば1カ所で全てそろうところを、お肉屋さんを選んでくださったお客さまに少しでも気持ちよく帰っていただくと同時に、満足してもらえるようにやっていきたいです」

 「もう一つ大事にしたいことがあります。世の中、SNSの発展やAIの進化などで、人と人とのつながりが希薄になりつつあるのではと感じています。その中で、僕らの販売の仕方は時代と良い意味で逆行しています。お客様と一対一で向き合い、寄り添える職業であると感じています。この仕事は会話を通して、お客さまと関わりが持てます。従業員一同、誇りを持って運営しております。その思いが少しでも伝えられるように、日々取り組んでまいります」

     ◇

 「肉のひぐち」は1956(昭和31)年11月創業。所在地は岐阜県可児市広見1236-1。2019(令和元)年、岐阜県HACCP取得。

(まいどなニュース・金井 かおる)