何気ない日常のなかで感じる恋心こそ、かけがえのないものなのかもしれません。漫画家・岡本有左さんが増刊flowers(小学館)にて発表した作品『余白の恋』は、大学生2人の淡い恋心を描いています。同作はX(旧Twitter)に掲載されると、約3000のいいねが寄せられました。
美大生の女子・月島は、深夜まで大学に残って作成した卒業制作のデータが消えてしまい焦っていました。そこにやってきた同じゼミの青年・屋城の手伝いもあり、8割ほどデータの復旧に成功します。どうやら屋城も今日は大学に残り、夜通し卒業制作に取り組む予定だそうです。
大学生活も残りわずかとなった2人。月島は卒業後の話を振ろうとしますが、うまく話ができません。ふと屋城は「大丈夫だよ、月島なら大学院試験も受かる」といいました。実は月島は就活に失敗し、今までやってきたことと関係がない企業に内定をもらっていたのです。
月島が就職を決めた直後、偶然にも屋城と出くわしました。屋城は、月島の就職に対し「納得して違う道に進めるならそれでいいと思う。でも月島らしさがなくなるならそれは違うと思うよ」と反対します。人の進路に口出しする屋城におどろく月島。しかし、その言葉で就職に納得していない自分自身に気付き、彼女は大学院に進学することを決めたのでした。
課題を終えた後、月島はソファに横たわりました。月島は、屋城を前にすると何もいえなくなるもどかしさを抱きつつ、眠りにつきます。朝となりふと目を覚ますと、そこにはノートを落としてデスクの上で寝ている屋城がいました。
ノートを拾い上げてふと中身をみてみると、そこにはソファで眠りについている月島のデッサンが描かれていたのです。月島は思わず「屋城さあ、私のことどう思ってんの?」と寝ている彼に声をかけます。現状、月島を取り巻く状況は不確定なものばかりです。しかし、それは月島にとって、とても楽しみな『余白のある未来』だと感じたのでした。
進路と男女の想いを描いた同作について、作者の岡本有左さんに話を聞きました。
■短いページでも読者の心に残る話を描こうと思い
-同作を描いたきっかけについて教えてください
当時お世話になっていた雑誌で、16ページの読み切り枠をいただいたことがきっかけです。
短いページでも読者の心に残る話を描こう、と思い作った作品でした。
-2人の絶妙な距離感が印象的でしたが、作品を描くにあたって意識したことはありますか?
この作品で意識したことは、言葉にしがたい感情を描くことです。相手と絶妙に噛み合わない空気、ずっと続きそうで確かに終わりがある夜の時間、そして「好きな人」と形容するには物足りない自分にとって特別な存在……これらは不完全な要素があるからこそ、そこに人間味があり、魅力があると感じます。
-人と人のつながりを感じさせる余白が絶妙な作品でした。岡本さんは現在、どのような作品を描いていらっしゃるのでしょうか
2026年春のアフタヌーン四季賞にて『レッカの残心』という読み切りで沙村広明特別賞をいただきました。また、前の雑誌で描いていた読み切りも公開しております。どちらもWebから全部読めます。
私は「たたかう女性主人公」の話が読みたくて漫画を描いてきたのですが、『レッカの残心』はそれがようやく形にできた作品でした。『余白の恋』も含め、今まで少女漫画雑誌で描いてきたので作風の違いが大いにあると思うのですが、同じ人間が描いているのでぜひ面白がっていただけると幸いです。
(海川 まこと/漫画収集家)























