「情緒的な疲労」を軽減してほしいと考える教員の多さが浮き彫りに ※画像はイメージです(kapinon/stock.adobe.com)
「情緒的な疲労」を軽減してほしいと考える教員の多さが浮き彫りに ※画像はイメージです(kapinon/stock.adobe.com)

「教員の働き方改革」という言葉をニュースなどで耳にする機会も増えましたが、実際のところ現場の状況はどうなっているのでしょうか。株式会社小学館(東京都千代田区)が運営する教員向けWebメディア『みんなの教育技術』が実施した調査によると、2025年の調査と比較しても長時間労働の状況に大きな改善が見られなかったほか、残業時間の削減以上に「情緒的な疲労」を軽減してほしいと考える教員の多さも浮き彫りになりました。

この調査は、全国の教育関係者2672人を対象として、2026年5月~7月の期間にインターネットで実施されました。

まず、「1日あたりの勤務時間(出勤してから退勤するまで)の平均」を尋ねたところ、「10時間以上」は79.4%。さらに、「12時間以上」に及ぶ人も24.3%と、約4人に1人に達しました。

1日の平均勤務時間は「約11.05時間」で、2025年調査の約11.17時間と比べても、ほぼ横ばいの結果となり、長時間労働が一時的な問題ではなく、学校現場に根付いた課題であることがうかがえました。

また、勤務時間の間に「実際にとれている1日あたりの休憩時間」については、「ほとんど取れない」(64.6%)と「15分未満」(19.5%)で8割超に達しました。

特に、「1日8時間以上勤務している」と答えた2610人のうち、「60分以上」の休憩を実際に確保できていた人はわずか6人、割合にして0.2%でした。

勤務時間外の仕事についても、厳しい実態が明らかになりました。

「持ち帰り残業をする日は週に平均でおおよそ何日ありますか」という質問では、「週3日以上」に相当する回答が49.8%。そのうち「ほとんど毎日」と答えた人だけでも34.6%に達しました。

また、「1カ月の中で、休日に仕事をする日数」についても、「3~4日」(29.5%)や「1~2日」(21.4%)など、合わせて86.4%が休日に仕事をしていることが判明。

平日に終わらなかった教材研究や学級事務、校務分掌の作業などを休日に進めるケースも多いようです。ほかの業務に中断されずに仕事を進められることから、あえて休日に出勤して作業するという声も報告されています。

では、なぜ残業が発生してしまうのでしょうか。「時間外勤務が発生する主な要因」を聞いたところ、「業務量がそもそも8時間以内に収まらない設定のため」(86.3%)、「授業準備・記録に日中集中して取り組めないため」(64.0%)、「会議・打ち合わせが放課後に設定されているため」(56.6%)といった回答が上位に並び、業務量や人員配置、会議の設定など、学校の運営全体を見直す必要があることがうかがえました。

さらに、「勤務時間の長さ以外で、『つらい』と感じる時」を教えてもらったところ、「保護者から理不尽なクレームを受けているとき」(22.9%)や「業務量の多さ」(15.7%)という回答が多くみられました。

そのほか、「保護者への対応に時間や気力を取られ、本来取り組みたい授業準備や学級運営に十分な時間を割けない」といった悩みや「休暇を取得しづらい雰囲気や、体調が悪くても休みを申請しにくい状況」を訴える声も寄せられています。

非常勤講師からは、授業準備にかかる時間や教材の印刷費用など、「勤務条件や制度面の不備」に関する指摘もありました。

■文部科学省の勤務時間目標との乖離

公立学校教員の給与などについて定めた給特法は、2025年6月に改正されました。これを受け、文部科学省は2029年度までに達成を目指す勤務時間の目標を示しています。

主な目標は、「時間外勤務が月45時間以下の教職員の割合を100%とし、教員の時間外勤務を月平均約30時間」まで減らすこと、さらに「年間の総時間外在校等時間を360時間以下」にすることです。

しかし、この数値を目標としつつ、具体的な施策が学校現場に依存している結果、目標(数値)と実態に差が出てきている現状が浮き彫りになりました。それを示唆する回答者からの声を一部抜粋します。

「仕事が終わってないのに、はやめの退庁を呼びかけられるとき。保護者への連絡などは、学校の電話から管理職の前で行いたい。家で自分のスマホから、保護者に連絡するときは気が滅入ってしまう」(40代小学校教諭)

「とにかく業務量が多く、とても終えられる量ではないということ。しかしながら、校長が、月の残業時間を平均30時間100%に設定しているうえ、管理職からは、残業時間を減らすよう遠回しに言われる。また、県教委からは、働き方改革が進み、教員の残業時間削減に効果が出ているのは喜ばしいという謎の称賛が時折耳に届く。つまり、仕事を持って帰ってカウントできない残業を行え、または、タイムカードを改ざんして残業時間を減らせという指示であると受け取っている」(50代小学校教諭)

残業時間という数字を減らすことだけが先行してしまうと、実際の業務負担が見えにくくなるおそれがあります。勤務時間を適切に管理することと、現場で仕事が回る仕組みを整えることの両方が求められています。

厳しい勤務実態が明らかになる一方、教員の仕事に喜びを感じる場面についても質問が行われました。

「『これがあるから教員はやめられない!』と思うような強い喜びを感じるのはどんな時ですか」と尋ねたところ、「子どもの成長やできるようになった瞬間」や「子どもたちの笑顔や楽しそうな姿」など、子どもに関係する前向きな出来事を挙げた人が68.1%にのぼりました。

教員の精神的な負担について、「残業時間を減らすより、情緒的疲労を減らしてほしい」と「情緒的疲労を減らすより、残業時間を減らしてほしい」の2つの考え方のどちらを選びますかと聞いたところ、前者に近いと答えた人が60.6%となりました。

ただし、別の設問では異なる傾向も見られました。

今後開発されるデジタルツールについて、「今後、職場の情緒的疲労を減らす新たなデジタルツールが開発されることに期待したい」と「今後、職場の生産性を高める新たなデジタルツールが開発されることに期待したい」のどちらに期待するかを尋ねたところ、後者を重視する回答が65.3%でした。

なお、「研修以外にも自主的に学んでいる」と回答した2043人のうち、80.4%が「俯瞰的に物事を見られている」と回答し、「自主的な学びをしていない」と回答した584人と比べて約28ポイントの差があり、学び続ける姿勢と物事を客観視する力との関連がうかがえました。

教員の働き方を改善するためには、勤務時間を適切に管理することに加えて、業務量や人員配置を見直し、困ったときに相談できる環境を整えることも重要です。

残業を減らすという数値目標と、教員が安心して働き続けられるための心のケア。その両方を進めていくことが、学校現場の働き方改革に求められているのではないでしょうか。