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(3)復興委は官僚OBが仕切った 早くも「後退」の懸念…
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 十二月十八日、東京都内で開かれた阪神・淡路大震災復興推進決起大会。地元主催の会合に、阪神・淡路復興委員会の下河辺淳委員長も姿を見せた。

 「提言は今、復興本部事務局で細かく詰めている。詰めに期待している。行政がどう支援し推進するか、大きな課題だ」。あいさつには自負と懸念がこもっていた。

 首相の諮問機関として発足した「復興委員会」は十月末、委員長談話を発表し、事実上、審議を終えた。二月来、提出した提言・意見は十四回を数える。五年間の復興特別事業と十年の特定事業。提言は政府方針のベースになった。

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 委員会は、評論家の堺屋太一氏、川上哲郎・関経連会長、一番ケ瀬康子・東洋大教授、伊藤滋・慶応大学教授に、地元から貝原知事、笹山神戸市長が加わり、後藤田正晴・元副総理、平岩外四・前経団連会長が特別顧問を務める。

 提言はどのように決まったか。毎回、陪席していた関係者は振り返った。

 「論議の後、委員長がまとめて提言する。論議は特別顧問の後藤田さんが支えた。委員会は官僚OBの二人が仕切っていた」

 議事録で、その軌跡がうかがえる。

 会議では、事前に各委員がテーマに沿った意見を提出、委員長が原案をまとめる。冒頭に案が示され、論議が進む。最後にとりまとめが行われ、提言を提出する。だが、案が論議で修正されることはなかった。

 神戸港の仮設桟橋、上海・長江交易プロジェクト。提言でただちに動いた事業は、委員長発案による。

 後藤田元副総理が、長く話したのは、初めて出席した二月の第二回である。

 「計画は、物理的、社会的、財政的にぎりぎりの線を求めてやっていただきたい。それを超すと理想倒れになる」

 「復興事業の対外開放は必要かもしれないが、ここに書かねばならないことなのか」

 「政府としては、個人の損失に直接補償しない建前だ。だから雲仙では基金を使った」

 発言を、委員長が引き取り「重要な話で論議の軸になると思う」と述べる。早くもこの段階で、規制緩和、個人補償にタガがはめられたように映る。

 取材に対し、下河辺委員長は話した。「後藤田さんと私の仕事は縦割り省庁を説得するということで、会議前後に次官、局長とどれだけ話したか。官僚OBが頼んでいるんだから、多少は遠慮してくれと。一字一句直していないのは、事前の段取りだ」

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 提言は、国土庁の復興本部事務局で精査し、官邸の内政審議室を通じて各省庁に伝えられた。

 だが、十二月十九日、厚生省は、特定事業の一つ、東部新都心のヘルスパークについて、地元要望への回答という形を取りながらも「国立としての施設整備は困難」との考えを示した。特定事業など国の支援策を検討するはずだった、まちづくり推進費は、予算折衝で、大阪湾ベイエリア施設整備調査に限定された。

 復興委員会の任期は来年二月まで一年。復興本部の設置期間は五年。「内閣も替わるし、人も替わる。しり切れとんぼになる心配を持つ。どう克服するかを考えなければならない」。十月末の復興委会合でこう発言したのは、当の後藤田元副総理自身である。

 懸念は、早くも姿をみせ始めたようにみえる。

1995/12/29

 

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