「日本を地震から守る国会議員の会」(会長・後藤田正晴元副総理)は、与党議員八十二人でつくっている。その小委員会が、十二月十二日、議員会館で開かれた。兵庫県が提案する住宅地震災害共済保険制度の検討のためである。
先の全体会で、後藤田会長は「震災で地震保険の欠陥が指摘された。新しい仕組みは必要なのか否か。個人補償はできないのかどうか。考えてみよう」と提案。小委員会は、県、大蔵省、損保業界から話を聴いた後、論議が始まった。
「基本的にいいのではないか」と賛成論も出た。が、大蔵省OBの相沢英之議員(自民党)が消極論をぶった。「私的な補償制度に官製の保険がいいのか、私個人として消極的だ」
とりなす形で、柿沢弘治委員長(同)が「できるだけ前向きに取り組むということでいいですね」とまとめ、会合は終わった。
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同制度は、車の自賠責などと同様、住宅所有者の強制保険で、一戸平均年一万二千円を負担する。全国で約四千万世帯と計算して、四千八百億円が集まる。それを被災した住宅再建費に充てる考えである。
十月十七日、県が発表した提案は、和久克明企画部長が、四月以降、任意の研究会で、業界の意見も聴き、練ってきた。
狙いは阪神大震災への遡及(そきゅう)にある。だが、「地元を助けるためだけと思われては、制度そのものがつぶれる」と県は懸念し、遡及に触れない形で、実現に動き始めた。
十一月二十九日。神戸弁護士会館。現地入りした日本弁護士連合会の「自然災害に対する保障制度検討小委員会」との意見交換会が持たれた。
委員長の早川忠孝弁護士は「制度は救済の網からこぼれた人を公的に救うためだ。遡及適用は当然」と発言、立法提案の作業を進めることを明らかにした。
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しかし、国の動きは鈍い。池端国土庁長官は、衆院災害対策特別委員会で「全国的な観点も含め、中長期的な視点から幅広く検討する」と答弁するにとどまっている。
「全国的」「中長期的」という言葉は、真剣な検討からほど遠く聞こえる。
柿沢委員長は「制度発足直後の災害の補償には、国債発行などによる資金の裏づけが必要だ。財政当局にも意見を聴いている」と説明。通常国会末の六月までに結論を出し、地震災害対策議員連盟を発足させた新進党との連携も視野に、議員立法を模索したいという。
雲仙・普賢岳百七十一億円、奥尻二百五十六億円に対し、阪神大震災千七百二十八億円。義援金は多く寄せられたが、住宅被害の支給は一戸四十万円にすぎない。雲仙、奥尻は一千万円を超えた。
「雲仙は義援金で助けられた」と、日本弁護士連合会小委員会のメンバーで、長崎出身の福崎博孝弁護士は話した。
「今後の災害で義援金が集まる保証はない。国の経済や義援金に左右されない保障のシステムが必要だ」。補償の仕組みをつくることが、将来の保障になるという指摘である。
現在の地震保険法は、一九六四年の新潟地震をきっかけに、政府が提案、成立した。
民間の保険だが、補償できない場合、公的資金の裏づけがある。「国が関与してつくろう」と音頭を取ったのは、当時大蔵大臣の田中角栄元首相だった。
1996/1/4