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(13)自主財源減少 強まる交付税依存
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陳情と指導の構図続く
 市職員のベア交渉は年を越した。西宮、芦屋、宝塚、伊丹、尼崎市。川西を除く阪神間五市そろっての越年だった。

 「復興予算が足りない。国、県に財政支援を要請している。ここで自助努力を示さなければ」。各市の回答はベアゼロ。組合側は「職員も被災している。復興のため懸命の努力を重ねている」と、アップを主張して譲らなかった。

 人事院勧告通りの上げ幅による年内妥結が恒例で、越年は十数年ぶり。二月初めが交渉のタイムリミットである。

 「ラスパイレスの適正化、考えてみてください」。兵庫県庁を訪れた芦屋市の岡本威総務部長が、久保敏彦地方課長から声をかけられたのは、ベア交渉が始まろうとしていた十月半ばだ。

 当時、同市はまだ改定の態度を決めていなかった。財政は厳しいが、ゼロでいいか、迷いもあった。「手当は見直すが…」と、岡本部長は言葉を濁した。が、財政支援の陳情の度、適正化を指摘される。助役にも、県庁から改定見送りを求める電話がかかった。

 岡本部長は言う。「財政が苦しいのに、給与が高いと、まだ余裕があるとみられる」。同市職員労働組合は「市の背後にある県を動かさなければ、ベアは見込めない」と、県自治労連を通じ、県地方課との交渉を働きかけている。

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 ラスパイレスは、国家公務員給与を一〇〇とし、自治体職員の給与を比較した指数。指数一〇九・一と全国市町で五位の西宮市を筆頭に、阪神間五市は県内上位を独占してきた。

 適正化の指導はこれまでもあったが、給与アップを支え、指導をかわし続ける財政力が、各市にはあった。市税収入をはじめとした豊富な自主財源である。

 しかし、震災は状況を一変させた。

 馬場順三・西宮、北村春江・芦屋、正司泰一郎・宝塚の三市長は、昨年十一月下旬、そろって自治省を訪ねている。

 三市は、国の普通交付税が交付されない、いわゆる「不交付団体」だ。「声を上げないと、国からもうまくいっているとみられる」。合同陳情は馬場市長が呼びかけ、二回目だった。

 携えた十二項目の要望書には「国勢調査人口の特例措置」が含まれていた。

 交付税の必要性は、国勢調査人口が基準の一つになる。震災で、不交付団体から交付団体に転じるとみられていたが、調査は大幅な人口減少を示した。「人口が減れば、財政需要が減る。交付税は必要ない」との結論になりかねない。

 特例措置は、将来戻ってくる人口を考慮に入れたうえでの配慮を求めた。

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 普通交付税と並ぶ、もう一つの地方財政の柱、特別交付税の九五年度一次配分は十二月に決まった。

 西宮市三十七億九千万円、芦屋市十八億四千万円、宝塚市十三億千万円。額は県から通知があったが、根拠は示されなかった。三月には二次配分がある。

 久保地方課長は「一定のルールと各市の財政状況を見て、一種、機械的に配分している」と話すが、市側は「配分権限は自治省が握り、窓口の県が影響力を持つ」と受け止めている。

 十二月十八日、正司宝塚市長は、一次配分の礼と二次配分の陳情で、自治省を訪ねた。要望の後、同省幹部は冗談交じりに漏らした。「ラスパイレスが高い市に多く配分すると、そうでない市の目もありますから」

1996/1/10

 

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