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「十年は節目とは思わない」。阪神・淡路大震災の震源、淡路島内の全犠牲者六十二人の遺族を対象に神戸新聞社が実施したアンケート調査で、回答者の85%がこう答えた。「家族を失った悲しみは続く」との声が多く、傷の深さが浮き彫りになった。一方で、犠牲者と同居していた世帯の85%が自宅再建などにより同じ市町内にとどまっていることも分かり、土地や地域との強いつながりも裏付けられた。
淡路島内で被災したことが原因で死亡した人は五十一世帯六十二人。二親等以内の近親者を対象に昨年九-十二月に聞き取り調査し、回答を拒否した二世帯、連絡がつかない一世帯を除く四十八世帯の遺族から回答を得た(回答率94%)。
兵庫県が「復興計画の最終年」と位置づける十年を「節目だと思うか」との設問では、85%(四十一人)が「そう思わない」と回答。「震災を思い出さないようにしている」「地震のニュースは消す」など、悲しみが癒えない現実を示した。
「行政やマスコミが勝手に区切りを付けるのかと腹立たしい」「区画整理も終わらない間に、町は年寄りばかりになった」。商店主からは、復興より高齢化・過疎化が進む現状へのいらだちも噴出した。
遺族には原則として最高五百万円の弔慰金が支給されるなどしたが、「十年間の公的支援は十分だったか」との設問には、60%が「不十分だった」と回答。「分からない」が29%、「十分」は10%だった。
「家財もすべて失った者には焼け石に水」「自力で自宅再建した。行政はあてにならない」という声が目立った。一方で「震災の教訓で支援が増えたのは評価すべき」との意見もあった。
住宅再建状況では、犠牲者と同居していた世帯の61%が自宅を補修・再建してとどまった。引っ越した場合も62%は同じ市町内を選んだ。離れない理由は「土地や田畑がある」「地元に親せきや知人が多い」など。「死んだ子が寂しがるから」という父親もいた。
このほか、犠牲者本人のデータでは、半数を六十五歳以上、15%を中学生以下が占め、「災害弱者」が目立った。死因では過労などによる関連死が8%と、震災死者全体の14%より少なく、都市部より避難所や仮設住宅解消が早かった成果が出たとみられる。(直江純、高田康夫)
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