記事特集
政府の地震調査委員会は十二日、阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)を起こした活断層を含む六甲・淡路島断層帯の今後三十年以内の地震発生確率などの長期評価を発表した。同断層帯の六甲山地南縁-淡路島東岸区間では、活断層の長さや過去の地震活動から求められる最大規模の地震に対し、兵庫県南部地震を「一回り小さく、活断層が持つエネルギーの数%しか解放していない」と評価。三十年以内にマグニチュード(M)7・9程度の地震の発生確率は「最大0・9%」とし、国内の主な活断層の中で「やや高い」確率となった。一方、「兵庫県南部地震級(M7・3)はこれ以上の確率で起こりうる」とした。
同断層帯は、六甲山地南縁-淡路島東岸区間(長さ約七十一キロ)と淡路島西岸区間(同約二十三キロ)の主部と、洲本市から南あわじ市にある先山断層帯(同約十二キロ)で構成する。
調査委はこれまで、兵庫県南部地震の発生直前の同断層帯・淡路島西岸区間(野島断層を含む)の三十年確率を8%としてきたが、震源となった野島断層でエネルギーが解放された結果、現在では淡路島西岸区間における三十年確率をほぼ0%と発表した。
一方、六甲山地南縁-淡路島東岸区間が活動した場合の最大震度はM7・9程度。兵庫県南部地震はエネルギー量にして八分の一程度で、この区間でのエネルギーの解放は「数%のレベル」と分析している。
兵庫県南部地震で六甲山地南縁-淡路島東岸区間の一部しか動いていないと判断した結果、同区間の最新活動は十六世紀までさかのぼると推測。「小さい地震ほどより多く発生する法則からいえば、M7・3の地震が起きる確率は0・9%より高い」としている。
南側の先山断層帯については、活動した場合はM6・6程度だが、三十年確率についてはほぼ0%とした。また、神戸市沿岸から大阪湾南部までの大阪湾断層帯が活動するとM7・5程度になるが、三十年確率は0・004%以下とした。
メモ
長期評価
地震調査研究推進本部(本部長・中山成彬文科相)の傘下で、専門家14人で組織する地震調査委員会(津村建四朗委員長)が国内の主要な98の断層帯について、今後30年以内の地震発生確率などを長期評価として発表している。確率の最大値が3%以上を「高い」、0・1%以上-3%未満を「やや高い」としている。
■長期評価あり方に疑問 M7.3阪神・淡路は対象外
政府の地震調査委員会が十二日に発表した六甲・淡路島断層帯の長期評価。阪神・淡路大震災を起こした断層帯だけに注目が集まった。結果は、「震源の野島断層は動いたが、神戸側の断層は動いたことにならない」。地震の危険性は解消されておらず、あらためて防災体制の強化が迫られる一方、あれほどの被害が出た断層の動きを「最大規模より一回り小さい」として、評価対象にできない長期評価のあり方にも疑問の声が出ている。
地震発生の三十年確率などを出す長期評価は、活断層が数千年ごとに活動を繰り返す平均活動間隔と、最新活動時期の二つで割り出している。
六甲山は、この断層帯が数十万年の活動によって隆起したもので、九百-二千八百年に一回の活動で三メートル程度隆起してきた。兵庫県南部地震では野島断層を除くと五助橋断層で数センチの隆起が確認されただけ。調査委は「地震の痕跡は十年後には地表から消えてしまう」として最新活動に数えなかった。
これに対し、調査委メンバーの伊藤潔・京大教授(地震学)は「地表に変位が現れなかっただけで、地下で断層が動いたという意見もあった」とし、内部で見解の違いがあったことを明かす。
また、兵庫県南部地震では、六甲山地南縁-淡路島東岸区間の長さ七十一キロのうち明石海峡付近から三十キロほどの地中部分だけが割れた、との研究結果は採用されたが、このような「一回り小さい地震」については「従来の手法では評価できない」とする異例の文章も今後の課題として付記された。伊藤教授も「地表に表れる活断層の評価だけでは限界がある」と指摘する。
一方、地元自治体の受け止めは冷静だ。兵庫県防災企画課は「『関西に地震はない』という予断が被害を拡大させた経験を忘れず、耐震化や防災力向上に努めたい」とする。また、最大規模の地震が兵庫県南部地震の八倍となることについて、神戸市危機管理室は「阪神・淡路を想定した地域防災計画を立てており、これを確実にするのが当面の目標」と話した。
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