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碑は語る 震災10年

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地蔵の前で遊ぶ子どもたち。優しく成長を見守る=神戸市西区、市営岩岡住宅
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地蔵の前で遊ぶ子どもたち。優しく成長を見守る=神戸市西区、市営岩岡住宅

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 空が白み始めた。吐く息が白い。神戸市西区岩岡町大沢の復興住宅。一角にお地蔵さんがある。吹田勉さん(70)は、目を閉じ、手を合わせた。

 「福幸地蔵(ふっこうじぞう)」。その名には震災からの復興と、幸福が訪れるように、との思いが込められている。

 同住宅は、震災二年後の一九九七年に入居が始まった。現在、二百二十世帯のうち六十五歳以上が八割を超す。

 入居の翌年、当時自治会長だった吹田さんらが「みんなが手を合わせられる場所を」と提案。宗教的なものだけに抵抗はあったが、住民の三分の二以上の賛同を得て、九九年に完成した。

 以来、毎年八月の地蔵盆や、一月十七日の追悼行事のたびに、地蔵の周りに被災者やその子、孫が集った。住民の多くが、もといた場所から遠く離れたこの住宅に移ってきた。地蔵は心のよりどころになった。

 吹田さんが、地蔵ができた当時の入居状況を書いた図を見せてくれた。所々に空白がある。「たくさん死んだわ…」。指で名前をなぞった。地蔵の設置に奔走した仲間も亡くなった。

 「望郷の十年やった」。吹田さんは深いため息をついた。兵庫区の自宅は全壊。仮設住宅から移り、コミュニティーづくりに力を注いだ。「なかなか思い通りにはいかんわ。でもな、お地蔵さんを拝むと、不思議と気持ちが静まるんや」

 地蔵の横にある手書きの看板に目が留まった。

 「今一度、歴史の真実と現実を見極めること 尊い出会いに芽生える心の癒(いや)し…」

 忘れがたい故郷と、新たなふるさとが、お地蔵さんの柔和な笑みの前で交錯した。(記事・広畑千春、写真・田中靖浩)

2004/11/11

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