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(8)支援 潜むニーズに配慮必要
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 「足の不自由な六十代の男性が車内で避難生活を送っている」

 新潟県小千谷市。家族から話を聞いてきたばかりのボランティア仲間が、神戸市から駆け付けていた石井明美さん(50)に知らせた。中越地震発生から十日余りたった夜だった。

 男性は風邪をこじらせ、医師に入院を勧められても、「自分がいないと家族が困る」と、頑として拒んでいた。

 石井さんは、特定非営利活動法人(NPO法人)「ゆいまーる神戸」理事長で、ヘルパーの資格を持っている。すぐに流動食やマットレス、毛布を集め、車を飛ばした。

 午後九時すぎ、男性はもう眠っていたが、家族は「こんなに早く来ていただいて」と喜んだ。

 災害ボランティアセンターに登録したボランティアの活動は、午後四時までと決められていた。登録をせず、独自に避難所を回っていた石井さんは思った。「四時以降に見えてくるニーズもある」

 「ボランティア元年」との言葉を生んだ阪神・淡路大震災では、一年間に延べ約百三十七万人のボランティアが活動した。

 中越地震では、被災十一市町に地元の社会福祉協議会を中心としたボランティアセンターが設置された。これまでに延べ約五万九千人が、救援物資の配送や被災家屋の片付けなどを担った。多くのセンターは活動時間を日中に限った。「ボランティアの疲労が心配」「夜に避難所を回られると、被災者から不審がられる」。スタッフも苦悩していた。

 新潟の被災地の印象をこう話すボランティアもいる。「町内会がしっかりしていて、避難所の運営はスムーズ」「困り事を尋ねても、『間に合っています』との答えばかり」と。

 実際はその裏で、衰弱する高齢者や障害者らが支援の網から漏れていた。介護を担う家族、「支援者」とされる町内会長や行政職員らの疲れもピークに達していた。

 渥美公秀・大阪大学助教授(ボランティア論)は「ボランティア自身がセンターの窓口に並び、仕事を振り分けられることを当たり前と思っていてはいけない」と指摘する。

 新潟県災害救援ボランティア本部によると、被災地で活動する県外からのボランティア数は、県内の二、三倍に及ぶという。「今後、仮設住宅への引っ越しが本格化する。まだ人手は必要」と同本部の担当者。資金面で支援する仕組みが、広域ボランティア活動には欠かせない。

 全国の共同募金会は今回、寄付金の一部から一億二千万円を拠出した。ボランティア保険の加入料や、送迎バスのチャーター代などに充ててもらうためだ。

 神戸市も、中越地震や台風23号の被災地を支援する団体に五十万円まで助成した。福井県は、県内のボランティア活動に限っていた基金を県外にも活用できるようにした。

 一方、新潟入りした神戸市社協の職員たちは「特に高齢の被災者は、方言を標準語に直して応対するのがしんどいのでは」とみる。

 外から訪れるボランティアは数日間の活動が多くなる分、地域事情になじむ前に戻ってしまう。短い時間でも、被災者に丁寧に接することが求められる。

2004/11/29
 

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