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(10)地震計測 M6級 全国で年10回も
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 東京・大手町にある気象庁二階の現業室。新潟県中越地震から一週間後の十月三十日午後一時すぎ、システムから機械音声が響いた。

 「計測」

 吐き出された電文は、川口町の震度データ。新潟県が町役場に設置した自動計測震度計からの伝送が復旧したことを告げていた。気象庁地震津波監視課の永井章課長補佐は、すぐさま「品質管理」と呼ばれる計測データのチェックを命じた。

 一時間後、震度7が判明した。震度7は、一九四八年の福井地震を機に設けられ、阪神・淡路大震災以来二度目。震度を決める要素の一つ、最大加速度が過去最高の二五一五・四ガルを記録したことも明らかになり、翌日の新聞各紙には「阪神・淡路超える」「過去最高」の見出しが躍った。

 「聞かれれば、そう答えるしかない」と永井課長補佐。「でも、地震の規模、揺れ、エリア、どれをとっても阪神・淡路より格段に小さい」

 阪神・淡路当時の震度観測は全国で約三百カ所。震度7を計測する震度計はなかった。二十日間の調査を経て、幅二キロ、長さ二十キロに及ぶ震度7エリア「震災の帯」が浮かび上がった。

 時間がかかる震度7の認定が、初動対応に役立たないという批判も浴び、自動計測震度計が導入された。自治体設置分などもオンライン化し、今では十倍超の三千四百カ所の震度情報が即座に分かる。一つでも7があれば、震度7の地震と呼ばれる。しかし「川口町の震度は6・5で、繰り上げて7の発表。震度1ぐらいは計測状況ですぐ変わる」と永井課長補佐。

 中越地震の震度7エリアは阪神・淡路よりはるかに狭い。地震のエネルギーを示すマグニチュード(M)は、中越で6・8。阪神・淡路の7・3は約六倍に当たる。二、三階建て建物が壊れやすい周期一-二秒の地震波が阪神・淡路では最も強く、中越では〇・五秒前後が強かった。

 日本列島では、四つのプレート(岩盤)が集まり、押し合っている。押された陸側のプレートが跳ね上がるのが海溝型地震。それまでにプレートの表面にたまったひずみが割れるのが直下型で、内陸型ともいう。阪神・淡路と中越は、いずれも直下型地震だ。

 東日本がある北米プレートは、太平洋プレートとユーラシアプレートに挟まれている。日本海側は地盤が柔らかく、海から山脈と盆地が波打つように繰り返す「活褶(しゆう)曲帯」になっている。

 このような場所には、地中に数多くの断層が眠っている。中越で大きな余震が頻発したのも、複雑な地下構造を持つ地域だったことが原因といえる。本震と余震で四つの断層が地中にできている可能性も指摘された。

 政府地震調査委員会の事務局を務める文部科学省の鎌田高造企画官は「細かい断層では一気にひずみを解放できず、周辺の断層が一緒に動いた」と説明する。

 全国に少なくとも二千ある活断層は、活動の間隔が数千年単位と比較的短く、地形などから確認できるもののことだ。地中にある細かな断層は数知れない。

 震災のダメージは大きいが、阪神・淡路、中越の地震規模は、自然現象としては珍しくはない。「被害がなければ忘れるが、実は毎年のように起きている」と鎌田企画官。

 十一月二十九日未明にも、北海道東部でM7・1の地震が発生した。M6以上の本震は年十回程度、M7以上も年一回は起きている。私たちは「地震国」で暮らしている。

2004/12/1
 

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