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(3)土砂崩れ 兵庫の「危険」全国2位
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 兵庫県出石郡但東町、薬王寺地区。集落を貫く川から山すそへ、田畑が段をなして続く。

 台風23号の接近で強まる風雨を突き、荒砂清志さん(68)が田んぼの水を切りに出かけたのは、午後四時ごろだった。帰宅後、川下で「バサーッ」と音を聞いた。「もう十分遅かったら、巻き添えを食っていた」。さっき通ったばかりの山際の農道が、崩落した土砂で川へと押し流されていた。

 薬王寺地区を含む但東町南東部は、増水した出石川が沿道を削ったり、土砂崩れで道が寸断され、一時孤立した。国道の不通は十九日間に及んだ。一九九〇年の台風19号でも、ほぼ同じ場所で土砂崩れが起こった。う回路の整備を望む住民らの不満は根強い。

 奥田清喜町長は、台風23号の後しばらく、普段ならば車で五分の距離を五十分かけて登庁した。「道路を付け替えねば、また同じことが起こる」。国や県に働きかけるが、復旧工事は、原状回復を目指して進んでいる。

 「集落の中心に田畑を集め、がけ近くに人が住む。そんな昔ながらの農村が今も多い」と、兵庫県砂防課。里山の背後から、災害の危険が迫る。

 傾斜度三〇度以上、高さ五メートル以上で、人家に被害が出る恐れがある急傾斜地崩壊危険個所は、県内で一万三千五百五十カ所に上る。土石流が人家を襲う危険をはらんだ土石流危険渓流は、六千九百十二カ所。いずれも広島県に次ぎ、全国二番目の多さだ。

 台風23号では、兵庫県内六十六カ所で土砂災害が起きた。犠牲者は津名郡津名町▽同一宮町▽出石郡出石町▽朝来郡和田山町-の五地区で五人を数えた。このうち四地区は、急傾斜地崩壊危険個所と地すべり危険個所だった。避難勧告は出石町以外で発令されず、課題として残った。

 台風23号で、土砂災害がこれほど頻発したのはなぜか。神戸大都市安全研究センターの沖村孝教授(地盤工学)は、雨に加え「強風がなければあり得ない崩壊が起きた」と指摘する。

 風が立木を揺すると根が引っ張られ、地面に亀裂が生まれる。そこに雨水が浸透し、地盤が緩む-。西脇市や多可郡にある植林地域などでも、「地割れ」があちこちに見られる。

 沖村教授は「阪神・淡路大震災でも同じような状況があった」という。六甲山では、震災による土砂崩れが約七百五十カ所で起きた。さらに、その後の四年間で、ほぼ同数の土砂崩れが発生した。地表にあった無数の亀裂に雨が入り込んだため、と考えられる。

 新潟県中越地震での土砂災害は、国交省調べで千六百カ所以上。夏場の相次ぐ台風来襲で地盤が緩んでいたことも影響した。東南海・南海地震が同時に起きたとして、土砂災害の被害は、兵庫県で全壊六百棟、死者五十人と想定されている。新潟・山古志村のように道路が不通となり、孤立するケースも十分、考えられる。

 兵庫県道路保全課が、過去の災害や地質などを考慮し、地震や大雨で道路に被害が出ると予想するのは二千百二十一カ所に上る。しかし、山崎断層地震など個別の地震による土砂災害について、県は被害想定を持っていない。

 台風23号では、県が既に防災工事をした道路沿いの斜面や想定外の場所で土砂災害が起きた。新たな対策が迫られるが、関係部署は被害復旧に追われ、いまなお検証は手付かずのままだ。

2004/11/23
 

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