記事特集
兵庫県こころのケアセンター(神戸市中央区)が、阪神・淡路大震災で家族を亡くした人を対象に被災から15年後の心理状況を調べたところ、約半数にPTSD(心的外傷後ストレス障害)症状や悲嘆反応などの心理的影響が残っていることが分かった。同センターは「割合が極めて高い。災害遺族には長期的な支援が必要」としている。
PTSDは衝撃的な体験後、突然記憶がよみがえるなどの精神的な後遺症。悲嘆反応は死別の強い悲しみが続くもので、特に重い症状は「複雑性悲嘆」と呼ばれる。
同センターの宮井宏之主任研究員らが昨年11~12月、震災遺族らでつくるNPO法人の協力で遺族197世帯に調査票を送付。10~90代の106人から回答を得た。
調査では、PTSD▽複雑性悲嘆▽うつ-について、それぞれの評価基準に従い質問。PTSDは「そのときの場面がいきなり頭に浮かんでくる」「そのことを思い出させるものには近寄らない」など22項目を尋ねた。その結果、症状を示す「ハイリスク」が54・1%に上ったという。
複雑性悲嘆は「亡くなった人のことをよく思い起こすので、通常やっていることができなくなる」などの有無を質問。52・5%が悲嘆反応を示し、5・2%は複雑性悲嘆とされた。軽症以上のうつ症状は54・5%と半数を超えた。
地震による被害に関しては、54・9%が「住宅が全壊・全焼」、74・0%が「命の危険を感じた」と回答。「当初は生活再建や子育てに必死だったが、生活が落ち着いてから激しい悲しみが襲ってきた」(妻を亡くした男性)▽「1月17日が近づくと落ち着かない。今も胸が張り裂けそう」(子どもを亡くした女性)-といった心情を記す遺族もいた。
同センターは年内に今回の回答者を対象に再調査を実施。加藤寛・副センター長は「心理的影響が強い人ほど、活力や満足度などの『生活の質(QOL)』が低いという結果が出た。日常生活への影響は今も続いている。長期的な視点でケアを考えないといけない」と話している。(災害特報班・岸本達也)
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