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災の国~問われる「覚悟」~

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朝。東京へ向かう新幹線が頻繁に発車する。1日約40万人が新幹線で東京と地方を行き来している=神戸市中央区、JR新神戸駅(撮影・峰大二郎)
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朝。東京へ向かう新幹線が頻繁に発車する。1日約40万人が新幹線で東京と地方を行き来している=神戸市中央区、JR新神戸駅(撮影・峰大二郎)

朝。東京へ向かう新幹線が頻繁に発車する。1日約40万人が新幹線で東京と地方を行き来している=神戸市中央区、JR新神戸駅(撮影・峰大二郎)

朝。東京へ向かう新幹線が頻繁に発車する。1日約40万人が新幹線で東京と地方を行き来している=神戸市中央区、JR新神戸駅(撮影・峰大二郎)

 阪神・淡路大震災から20年がたとうとしている。街を歩いているだけでは、その傷痕はうかがえない。

 神戸市長田区菅原通。あの日、炎に焼き尽くされた街は区画整理で幅6メートルの道路や公園が整備され、住宅が整然と並ぶ。商店街の面影はない。小さな喫茶店に入った。店主の男性(63)は「きれいにはなったけど、人がいない。住むには静かでいい街かもしれないが」と苦笑する。

 約1・5キロ南西、新長田駅南の再開発地区。夏に取材した洋服店は閉店セール中だった。高齢の店主が9月に亡くなったという。3軒隣の紳士服店も店を畳む。「服を買ってくれるのは70~90代。もう潮時やね」。店主の妻(74)がつぶやいた。

 震災前、13万人だった長田区の人口は10万人に減った。区画整理3地区と再開発という計約4千億円を投じた巨大復興事業も、衰退に歯止めをかけられてはいない。

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 地方が疲弊している。中でも、震災が直撃した兵庫の低迷は顕著だ。1990年度以降の平均経済成長率(名目)は0・09%で、鳥取、福島に次ぐワースト3位。2011年度の県内総生産(同)も震災前(93年度)の10%減と回復できていない。

 一方で、震災後、兵庫から首都圏の4都県(東京、神奈川、埼玉、千葉)への転出超過は累計11万人に迫る。東京都の人口は14%(160万人)増え、総生産は16%(12兆7578億円)増加した。

 東京・丸の内。一極集中を象徴する光景がある。超高層ビル「サピアタワー」内に関西学院、関西、甲南、流通科学など地方11大学の「東京オフィス」が軒を連ねる。主な目的は、上場企業の半数近くが本社を置く東京での就職活動の支援だ。

 「地方の人材育成」という大義とは裏腹に、競って東京へ学生を送り出す地方大学。甲南大「ネットワークキャンパス東京事務所」の担当者は「地元への貢献も大事だが、東京を足掛かりに、全国や世界に飛躍する甲南生を応援したい」と説明する。

 地方から人、カネ、モノを集め、世界をにらむ巨大都市・東京。その機能を支える情報通信、物流・交通システムは高度化・精緻化を極める。首都直下地震や富士山噴火などの災害リスクが常に指摘されながら、この街は日本のあらゆる中心であり続ける。

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 「地方公共団体の自主性、自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図る」

 阪神・淡路の復旧が本格化しつつあった95年5月、地方分権推進法が成立した。国が財源を握り、施策の細部までを縛る地方行政を自治体に委ねようという大改革の一歩だった。東京一極集中打破への挑戦でもあった。

 それから20年。基本理念の実現は遠い。関西学院大教授前田高志(59)=地方分権=は「国は権限と財源を簡単には手放さない。自治体の多くも、責任の重さに向き合う覚悟がなかった。改革が進むはずがない」と指摘する。

 阪神・淡路の被災地はかつて、震災をばねに、新たな飛躍を期す「創造的復興」を打ち出した。だが「焼け太りは許さない」とする国の方針の下、画一的、省庁縦割りの規制に、その核心である創造性を奪われてしまう。

 立ちはだかるのは「官治集権」という巨大な壁である。=敬称略=

(森本尚樹)

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 「平穏期」の長い眠りから揺り起こされた日本列島。阪神・淡路大震災の後も、東日本大震災などの大災害を相次いで経験した。この国に暮らす私たちは、災害と生きる覚悟を胸に、次の災害に備えなければならない。その社会のあるべき姿とは。復興20年を踏まえ、考える。

2015/1/1

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