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災の国~問われる「覚悟」~

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大量の火山灰が降り積もった御嶽山山頂。巨大カルデラ噴火の被害は計り知れない=2014年9月29日
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大量の火山灰が降り積もった御嶽山山頂。巨大カルデラ噴火の被害は計り知れない=2014年9月29日

大量の火山灰が降り積もった御嶽山山頂。巨大カルデラ噴火の被害は計り知れない=2014年9月29日

大量の火山灰が降り積もった御嶽山山頂。巨大カルデラ噴火の被害は計り知れない=2014年9月29日

 昨年9月27日。紅葉の映える御嶽(おんたけ)山(さん)(長野、岐阜県)が、灰色の世界に一変した。戦後最悪の犠牲者を出した噴火災害。救助隊員の足を止めた火山灰は、山頂付近で約50センチ積もっていた。

 翌月。神戸大大学院教授の巽好幸(60)=マグマ学=は文部科学省で記者会見し、「巨大カルデラ噴火」の被害予測を公表した。

 日本列島は火山灰に覆われ、1億2千万人が生活不能になる。兵庫県もほぼ全域に、御嶽山頂と同じ50センチの火山灰が積もる。ライフラインは途絶え、移動手段も止まる。食糧はいずれ底をつく。

 以前から警鐘を鳴らしていた巽。だが、文科省の職員は「分かりますが、1万年に1回ですよね」と返してきた。「論文がないから広まらない」。巽が研究を始めるきっかけとなった。

 巽によると、噴火の規模を示す噴火マグニチュード(M)8以上の巨大カルデラ噴火の発生確率は、今後100年間で0・25%、M7以上は同1%。そのメカニズムにも言及した。「火山研究や観測技術の開発を進めるべきだ」と訴える。

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 米国では長期的な研究も進んでいる巨大カルデラ噴火。内閣府が2012年に設置した広域的な火山防災の検討会でも議論され、「国家存続の方策などを研究すべきだ」と提言した。

 だが、現在はメカニズムも予兆現象もはっきりしない。原発への影響が問題となり、原子力規制庁は14年度から研究費を付けたが、「何をどう観測するかの基礎的な研究段階」と担当者。安全審査にも生かされていないが、過去にカルデラ噴火が起きた九州で、原発が再稼働する見通しだ。

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 巽の会見はマスコミで報道されたが、この巨大災害の予測を、どれだけの人々が覚えているだろうか。

 「千人に1人か2人ではないか」と京都大教授の矢守克也(51)=防災心理学。「自分の身に起こるかもしれないと考えるリスクと比べると確率は低く、『なかったこと』にするのは自然な反応だ」と指摘する。

 神戸でも、阪神・淡路大震災の以前から直下型地震は想定されていた。1974年6月26日の本紙夕刊1面には「神戸にも直下地震の恐れ」との見出しが躍った。一方で「10万年単位の長期警告」との識者談話も添えられた。過去に震度6以上の地震が起きたとの記録がないことから安全神話が広がり、“警告”は忘れ去られていった。

 震災直前、六甲・淡路島断層帯の一部で直下型地震が30年以内に起こる確率は0・02~8%だった、と後に明らかになった。巨大カルデラ噴火を「1万年単位の話」として横に置いていいのだろうか。

 東日本大震災の津波被害の記憶が生々しい中、南海トラフ巨大地震の被害想定が公表され、行政は津波対策に力を入れる。だが、火山噴火をはじめ、未知の活断層地震、大型台風による高潮など、さまざまな危険が迫る。

 巽は「日本の豊かさと地震や噴火などは表裏一体にある。そのことへの覚悟がいる」と指摘し、続けた。

 「覚悟は、あきらめとは違う。被害を減らすためにできることはあるはず。大地の恩恵も痛みも受けた阪神・淡路の被災地は、それを強烈に発信できる」

 この20年、各地で災害が相次いだ。都市化、高齢化した社会を直撃した阪神・淡路の教訓は重みを増している。

=敬称略=

(高田康夫)

2015/1/14

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