阪神・淡路大震災では、復旧・復興に関わる行政上の権限や財源を国が握ったままだったため、地元自治体は現場や被災者の要望に合わせた施策が思うようにできなかった。その後も分権は進まず、東日本大震災の被災地でも同様の事態が繰り返されている。岩手県陸前高田市の戸羽(とば)太市長(50)に実情を聞いた。(聞き手・森本尚樹)
【平時から地方に裁量を】
-復興の進捗(しんちょく)状況は。
8年間の復興計画を立てている。最初の手続きで手間取ったが、ようやく軌道に乗りかけた感じだ。今は盛り土の段階だが、今秋には、市の中心部で店舗の再建ができる状態になっているはずだ。
-復旧・復興への国の細かな関与をどう感じるか。
認められないはずがない高台の宅地造成や農地転用にも、許可の手続きを課せられる。復興交付金を使うにも全て復興庁との協議が必要で、細かな説明を求められた上、予算を削られる。私たち市町村をもう少し信用してもらい、自ら決めさせてほしい。
-地方分権改革は進んでいない。
「分権の時代だから、各市町村がそれぞれ復興計画を立てよう」と国に言われ、作って持って行くと「駄目だ」と却下される。国は常に「自分たちが上だ」という態度で関わってくる。建前では国と市町村は対等とされるが、私たちはお願いするしかない。
-では、どのように分権を進めるのか。
非常時だけ権限を下ろしても、慣れていない自治体は使いこなせない。平時から市町村の裁量を増やし、最終的にはそれぞれの地域が自立を目指すべきだ。少しずつでも踏み出していかないと、いつまでも自立できない。
-阪神・淡路大震災の復興で参考にした点は。
震災遺構を残せなかったという話をよく聞いたので、後世に記憶を伝えるため、遺構の保存には配慮した。震災3年後ぐらいから、孤立化して自ら命を絶つ人が増えたと聞いており、しっかり心配りしないといけない。
◇ ◇
▽とば・ふとし 1965年、神奈川県生まれ。95年4月から陸前高田市議を3期12年務める。同市助役(副市長)を経て2011年2月、同市長に就任。東日本大震災後、「奇跡の一本松」の復元保存などを進めた。
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