兵庫県が阪神・淡路大震災を機に開設したボランティア活動の支援拠点「ひょうごボランタリープラザ」(神戸市中央区)。災害支援アドバイザーを務める高橋守雄(66)は今、署名集めに奔走する。
昨年1月、「『災害ボランティア割引制度』を実現する会」を結成した。東日本大震災の被災地に通い続け、ボランティア減少の一因に交通費や宿泊費の負担があると考える。
「今後の大災害でも公助には限界がある。支える人を支える仕組みが必要だ」
超党派の国会・地方議員らでつくる「全国災害ボランティア議員連盟」とも連携。「災害ボランティア支援法」を制定し、寄付などで支援基金を運用する仕組みを模索する。
「ボランティアは自己負担が原則」との異論も出るが、1年で約34万人分の署名を集めた。3月までに国に提出する予定だ。
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阪神・淡路を機に、社会に根付いたボランティア。1998年の特定非営利活動促進法(NPO法)成立で、多くの団体がNPO法人格を持つようになった。法人数は全国で約5万、兵庫県でも2千を超え、「官」が対応できない地域課題の解決を担う。
一方で、資金不足の問題が常につきまとう。「日本には寄付文化がない」との定説は今も消えない。
本当にそうなのか。
「日本にはそもそも、寄付全体の統計がなかった」。そう話すのは、日本NPOセンター(東京)代表理事の早瀬昇(59)だ。
2010年、早瀬が副代表理事を務める日本ファンドレイジング協会が発行した初の「寄付白書」は、日本の寄付市場が年間1兆円を超えることを示した。
12年は個人寄付だけで約6900億円に達し、企業など法人による寄付とほぼ同規模に。15歳以上の人口の半数近くが、何らかの寄付をしたと推計される。
「税金の使い道はよく見えないが、寄付は自分の未来に関わることを選べる。若い層には、そんな社会的な動きが『格好いい』という意識も広まっている」
ノーベル賞受賞者の京都大教授、山中伸弥(52)が研究資金確保のためマラソンに挑み、寄付サイトで2千万円以上を集めたのは一例だ。寄付は「人知れず」から、「見える」「見せる」ものに変わりつつある。
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兵庫県内でもこの20年、寄付を集め、NPOの活動を支える民間の助成団体が相次いで誕生した。
99年に設立された「しみん基金・KOBE」(神戸市中央区)は、延べ約160団体に約5700万円を助成した。障害者や子ども支援、農業など分野は幅広い。助成先の決定は、企業やNPO関係者らが審査する完全公開制だ。
一昨年には県内のNPOや企業が連携し、公益財団法人ひょうごコミュニティ財団(同区)が発足した。助成実績はまだないが、財団が推薦するNPOへの資金支援を呼び掛ける「共感寄付」を進める。
「社会の課題が深刻化し、行政だけで解決できると考える人は少なくなっている」と同財団専務理事の実吉威(48)。寄付への関心の高まりを感じるが「大きな団体や目立つ活動に集中している。小さくても地域を支える活動を知ってもらう必要がある」と語る。
地域での寄付の流れを、どう生み出すか。NPOがその力を付けたとき、真の地方創生の姿が見えるかもしれない。=敬称略=
(磯辺康子、上田勇紀)
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