保育所勤務が決まって用意した、「ノンタンTシャツ」と「はらぺこあおむしタオル」。ノンタンに気づいて「べー!べー!」と喜んでくれました。
保育所勤務が決まって用意した、「ノンタンTシャツ」と「はらぺこあおむしタオル」。ノンタンに気づいて「べー!べー!」と喜んでくれました。

7月、48歳になりました。そして、長年の夢だった「保育所の先生」になりました。

実は学生時代、「保育士」も希望の職のひとつでした。その後、新聞記者として子育て分野を取材しつつ、「やはり子どもに直接関わる活動もしたい」と、2人目の育休中に保育士資格の通信教育を契約。子育て支援のボランティアに生かすはずが、教材一式が届いた一週間後に500グラムで早産してしまい、大量のテキストに手をつけられないままあっという間に15年がたってしまいました。

「保育士」は、来世で叶えるしかないか……
なんて思っていた矢先、資格がなくともできる公立保育所の夏期限定アルバイトを、知り合いの先生から教えていただいたのです。夏休み中は、障害のある息子の定時制高校への送迎も不要となるため、ちょうど短期の仕事を探していたところ。

無事採用!!…と、喜んだのもつかの間、8時25分~16時40分までガッツリ働くなんて久しぶりすぎて(そのうち休憩45分)、アラフィフという年齢や体力が、日に日に不安になってきました。

最近足がもつれぎみだから、抱っこしてるときに転んじゃったらどうしよう…
最近目がかすむから、小さなおててを踏んづけちゃったらどうしよう……

命を預かる仕事が、このわたしに務まるのか?頭も体も動かず、若い保育士さんにイラっとされるんじゃ…!!?負の妄想が膨らみまくります。

数日前から持ち物を紙に書きだし、何度も確認。資料一式を熟読し、当日は5時半に起きて完璧に準備を終えました。

早めに勤務園に到着し、「さぁ、がんばるぞ!」と、自転車のかごからカバンを持ち上げた瞬間、
カバンの底からジャーッ!と、シャワーのように水が……

なな、なんと!水筒のフタが!開いていて!!
カバンの中で水がダダ漏れじゃないですか~~!!

エプロンも替えのタオルも、ペンもノートも弁当もびっしょびしょ…
「カンペキ☆」にして出発したはずが朝礼にも間に合わず、テンパったまま初日が始まりました…

配置されたのは、0、1歳児クラス。初めましてのわたしにも、ギューッと抱きついてきたりちょこんと膝に乗ってきたり、かわいすぎる子どもたち。わが家に乳幼児がいなくなり、通りすがりのちびっこを「かわいい…」と眺める日々でしたが、「先生」として堂々と抱っこできる幸せとありがたみを噛みしめます。

しかし!
わたしの任務は、ただ愛でることではなく、命と安全を守ること。

お昼寝の時間に、早々と起きてしまった3人の見守りを任されました。3人それぞれが自身の興味関心に応じ、あっちに行ったりこっちに来たり。全員に目配りできるよう、だれにも背を向けないよう関わり続けるのって、なかなか難しい。目の前の子と遊んでいるように見えて、視野を広く持ち、危険を察知してサッと動ける先生たちのすごさを、あらためて感じました。

すぐにおもちゃの取り合いになる子どもたちに、「貸ーしーて、だね」などと言葉を添えながら間に入り、貴重な成長過程に立ち合えている喜びも実感。名札をしていない16人の名前を一刻も早く把握できるよう、一人ひとりの顔立ちやシールのマークを必死で覚えています。

初日、最も打撃を受けたのは「太もも」。
7時間半、横座りと正座で過ごし、抱っこしたまま立ったり座ったり、意図せずスクワット状態。翌朝には階段をおりるのもつらいほどの筋肉痛になり、運動不足を痛感しています。

体の疲れに反し、意外だったのは夕方になっても目がしんどくないこと。ここ数年ドライアイに悩まされていたものの、「普段、スマホとパソコンを見すぎなだけ」というのも思い知りました…。

お昼休憩時、先生方と話しながら、わたし自身が第一子を保育所に預け始めたころを思い出しました。

娘が生後6カ月で職場復帰。街なかで同じぐらいの月齢の赤ちゃんを見るたび悲しくなったこと、取材先で「今、お子さんはどうしてるの?」と聞かれ、「保育所に…」と答えながら泣きそうになったこと。先生たちにそんなエピソードを披露しながら、20年近くたっても涙が出そうになることに、自分で驚きました。

かわいいわが子と、大切な仕事。そのはざまで苦しんだあのとき、支えになったのは、担任の先生の存在です。心からかわいがってくれているのが伝わり、先生を信頼して仕事に向かうことができました。

たった10日間の「にわか先生」に、そこまでのことはできないけれど、ちょっとでもあの子たちの人生の土台になれたら。一人ひとりのかわいい笑顔を思い出しながら、次の勤務へ気を引き締めています。

▽萩原 真(はぎわら まこと)

【降っても晴れても すきっぷびより】は、すきっぷスタッフで元記者の萩原が、3人育児のドタバタや障害のある息子との生活で感じたこと、うれしいことから尽きない悩みまで本音満載でお届けします。