冬の到来を間近に控え、兵庫県南あわじ市の福良湾で「淡路島3年とらふぐ」の水揚げが本格化している。約3年間、鳴門海峡の潮流が入り込む養殖場で育ち、引き締まった身とほのかな甘みが人気の逸品。主に島内のホテルや京阪神の料亭に出荷されるといい、漁師たちが作業に精を出している。(西竹唯太朗)
3年とらふぐは、通常2年間養殖して出荷するフグを、1年長く育てることで大きくする。納品先の求めによって異なるが、主に1・2キロ以上の個体を出荷する。
福良のフグ養殖が始まったのは1980年代。その後、他地域でも養殖が増えたため、さらに付加価値を高めようと、2000年代前半、漁師たちが手間がかかる3年養殖のブランド化に踏み切った。
フグは沖合約2キロのいけすで飼育する。養殖期間が長くなると飼育の難易度が格段に上がるといい、異変がないか丁寧に見回り、共食いを防ぐ「歯切り」にも気を配る。それでも、毎年仕入れる稚魚約25万匹に対し、3年ものとして出荷できるまで育つのは10万匹ほどだという。
今シーズンは、福良漁業協同組合に加盟する水産業者5社が手がける。夏場の暑さの影響で水温が下がらず、例年に比べてフグの成長は遅め。ただ、病気やけがで死ぬ個体は少なく、平年より2万匹ほど多い約12万匹の水揚げを見込む。
出荷のピークは年末。福良漁協の前田若男組合長(53)は「今月下旬から水温もようやく下がり、急激にフグが大きくなり始めた。寒さが本格化すればさらに大きく成長してくれると思う」と期待を寄せた。