救出された斉藤好さん(右端)。「のじぎく賞」を受けた(左から)波戸宏明さん、長田恵一さん、中山達史さん、石橋八真斗さん、神田展志さん、内海武史さんに感謝を伝えた=南あわじ署
救出された斉藤好さん(右端)。「のじぎく賞」を受けた(左から)波戸宏明さん、長田恵一さん、中山達史さん、石橋八真斗さん、神田展志さん、内海武史さんに感謝を伝えた=南あわじ署

 兵庫県南あわじ市津井の津井港で2月上旬、82歳の男性が誤って岸壁から海に転落し、命を失いかけた。係留していた漁船のロープをつかんで助けを求める男性を救出したのは、電気工事の作業で近くにいた会社員や知人ら6人。とっさの連携で海から引き上げ、救急搬送につなげた。「無事で本当に良かった」。そう笑顔を見せる6人の善行をたたえて、兵庫県から「のじぎく賞」が贈られた。(劉 楓音)

■救急搬送された82歳の斉藤さん 退院し元気な姿見せる

 2月7日午前9時半ごろ、同市津井の斉藤好(このむ)さん(82)は日課の散歩中だった。魚がいるかどうか見ようと思い、津井港で岸壁から海をのぞき込んだとき、足をすべらせて転落した。

 斉藤さんは漁船から垂れていたロープを握りしめ、両腕に巻き込んで海から顔を出した。水深は3メートル近くあり、離せば溺れてしまう。「おーい、おーい」。震えながら声を絞り出す。

 だが、誰からも返事はない。この日、同市の最低気温は4度。体温がどんどん奪われていく。「寒くて、力が入らず顔が水に浸って。『もうええわ』と」。一度は諦めかけたが思い直し、「助けてくれ」と声を張り上げた。

 声に気付いたのが、電気工事の警備員内海武史さん(51)。斉藤さんの知人波戸宏明さん(72)も通りがかり、2人で岸壁の周辺を捜索。ロープにつかまる斉藤さんを発見した。

 その後、力を発揮したのは電気工事のため近くにいた「きんでん淡路営業所」(同市)の長田恵一さん(51)、中山達史さん(37)、石橋八真斗さん(33)、神田展志さん(51)。係留中の漁船に乗り込み、斉藤さんのズボンのベルトをつかんで引き上げた。服が海水を吸収して重かったが、長田さんは「びっくりするよりも体が動いていた」と振り返る。

 転落から救出までの時間は約30分。意識はあったが、呼吸が乱れ、体は冷たくなっていた。到着した救急車で県立淡路医療センター(洲本市)に搬送されて一命を取り留めた。

 このほど、南あわじ署で行われた「のじぎく賞」の伝達式には、前日に退院したばかりの斉藤さんも駆けつけた。「どないぞ、お礼を言わなあかん。そう思って、はよ治した」。すっかり元気になって話す斉藤さんの姿に、6人は安心した表情を見せた。