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トリを飾るガガガSPのステージに詰めかけた観衆=2022年5月、神戸メリケンパーク(一般社団法人COMING KOBE実行委員会提供)
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トリを飾るガガガSPのステージに詰めかけた観衆=2022年5月、神戸メリケンパーク(一般社団法人COMING KOBE実行委員会提供)

 2003年1月。神戸市長田区の南駒栄公園で、神戸のバンド、ガガガSPの無料ライブ「弱男の夕」が開かれた。阪神・淡路大震災発生から8年。復興へ歩む街を後押ししようと企画されたこのイベントは、無料チャリティーフェス「GOING KOBE(ゴーイングコウベ)」(現カミングコウベ)が始まるきっかけとなった。

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 「事務所と地元の商店街の人らが協力して開かれたイベントなんですけど、僕自身は最初、前向きやなかったんです」。ガガガSPボーカルのコザック前田(43)はそう打ち明けた。

 当日は小雨。前日にライブをした東京からどんよりした空を見上げながら、長田に向かった。「そんなに人来てないやろ」。期待していなかったが、会場で待っていたのは、1万人を超えるファンや地元住民だった。

 ライブは白熱した。あまりの観衆の多さに、終了後はすぐ車に乗せられ、護送されるように打ち上げ場所へ。そこで地元商店主らから感謝の言葉を受けた。「昭和40年代以来のにぎわいやった」「閑散としている飲食店もお客さんでいっぱいになった」。前田は「1日だけのことやけど、自分のバンドがこうやって地域に影響を及ぼし、人様に感謝されるようなことがあるんやと初めて知った」と振り返った。

■巡り合わせ

 「弱男の夕」に、神戸のライブハウスで働いていた、松原裕さん(19年死去)と風次さんは観衆として参加していた。「神戸でフェスがやりたい」と夢見ていた2人。ライブの熱狂に触発された。「人を元気づけたり、復興のお手伝いをしたりすることが無料の音楽イベントでできるんやと、ガガガSPに教えてもらった」と風次さん。

 01年から神戸ポートアイランドで開かれていた人気フェス「ラッシュボール」が、04年を最後に大阪に移転。「このままでは神戸の音楽シーンが寂しくなる」と危機感を募らせる中で迎えた04年暮れ、一つの巡り合わせがあった。

 神戸市が、翌年の震災10年事業の助成金申請を募集していた。「導かれるように応募した」と風次さんはいい、震災を語り継ぐ、そして神戸を活性化させることをテーマに、ゴーイングコウベを企画。トリを頼んだのは、ガガガSPだった。

■17回連続トリ

 ガガガSPはカミングコウベの第1回から昨年の第17回まで、全てでトリを務めている。これだけ長期にわたり、一つのフェスでトリを続けるバンドは異例だ。

 前田は「プレッシャーは強くて、逃げ出したくなる時もあった。カミングコウベの規模が年々大きくなるにつれ、もっと人気のあるバンドが出演するようになった。僕らがトリとしてステージに上がる前に、イベントのピークを迎えることもあった」と話す。

 それでもトリを張ってきたのは、神戸のバンドシーンを盛り上げたいという一心からだった。「『カミングコウベに出演したいから、神戸でバンドをやりたい』っていう若い子が増えてくれたらという思いでやってきた」

 「フェスの最後に打ち上がる花火みたいな存在」と笑う実行委員長の風次さんに、前田が相づちを打つ。そして続けた。「カミングコウベが20年続くことを望んでいる。個人的な思いとしては、もしトリというバトンを誰かに渡すなら、やっぱり神戸のバンドならうれしいな」

(上)語り継ぎ、被災地支援 日本最大級のチャリティフェスは「神戸からの恩返し」

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