酒好きの河鍋暁斎が自身を投影して描いた?「酒のツマミに鰹を準備する鬼」
酒好きの河鍋暁斎が自身を投影して描いた?「酒のツマミに鰹を準備する鬼」

 幕末から明治にかけて活躍した絵師、河鍋暁斎(きょうさい)(1831~89年)の作品を紹介する特別展「ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界」が、神戸市立博物館(同市中央区京町)で開かれている。イギリス在住の収集家イスラエル・ゴールドマン氏の所蔵品から約110点を展示。約6割が日本初公開といい、必見の3点について同館の戸部愛菜学芸員(27)に聞いた。(安藤真子)

■学芸員が「推し」紹介 狩野派の技光る美人図/愛らしい鬼は自画像?

 暁斎は7歳ごろから2年間、浮世絵師の歌川国芳に習い、室町時代から江戸時代まで脈々と続く正統派「狩野派」で日本画を学んだ。浮世絵と狩野派の技法を併せ持ち、神仏画や美人画、歴史画、戯画など多様な作品を残した。

 戸部学芸員は暁斎を「変化の激しい時代の中でその変化をとらえ、ユーモアを交えながら庶民に寄り添った風刺画などを描いた」と評価する。唐の漢詩をモチーフに描いた「月下唐美人図」(55~56年)は、狩野派の号「洞郁陳之(どういくのりゆき)」を使って制作していた初期の作品。この時期の現存する作品は少ないといい、「狩野派の美しい色彩と線が生かされていて、当初からうまいことが伝わる」。加えて「サインを丁寧に書いていて、初心が感じられる」と評する。

 しっぽが二つに分かれた妖怪の猫又(ねこまた)が、三日月に照らされる石灯籠の上で踊る「猫又図」(71~89年)。その躍動感を、暁斉はモチーフの輪郭の外側や周囲に薄墨で濃淡をつける卓越した技法「隈(くま)取り」を用いて強調。戸部学芸員は「伝統的な技法に独自の表現を加えており、現代の私たちも同じ感性で楽しめる」とし、怪しい力が抜けて眠る猫又を描いた「石灯籠の上で寝る猫」(同)とセットで見比べてほしいとアピール。

 絵への執念から「画鬼」と呼ばれ、しばしば自身を鬼に投影し描いた暁斉。中でも「酒のツマミに鰹(かつお)を準備する鬼」(65~70年)は、火鉢でとっくりを湯煎する横で鬼が真剣なまなざしでカツオをさばいており、「退治すべき対象として描かれてきた鬼とは違い、愛らしい一面を描いている」。サインにのんべえの「の」が記されていることから「自画像的な意味も込められているのでは」と推測する。独自の表現で多様なテーマを描いた暁斉。戸部学芸員は「絵の向き合い方や生活がのぞき見える作品もある。お気に入りの一枚を見つけてほしい」と話す。

 9月23日まで。月曜休館(祝日は開館、翌日休館)。午前9時半~午後5時半(金・土曜は午後8時まで)。一般2千円、大学生千円、高校生以下無料。同館TEL078・391・0035