買い物客でにぎわう神戸・三宮センター街。若い女性に人気の靴ブランド「エスペランサ」の店舗に、サンダルやスニーカー、パンプスなどが並ぶ。
運営するのは神戸市長田区の名門靴メーカー、神戸レザークロス。2019年にアパレル大手のワールド(神戸市中央区)に買収され、子会社となった。その数年前に赤字に転落し、業績悪化は社員にも伝えられていた。「どこまで耐えられるかと思っていた」と、1995年に入社した渡部将人(52)は話す。
神戸レザークロスは48年に設立された。初代の齋藤章太郎から創業家が経営を担い、靴の卸・小売り、相手先ブランドによる生産(OEM)、靴職人の育成などを手がけた。
95年の阪神・淡路大震災で大きな被害を免れ、その後、ロングブーツの流行などに乗って業績を伸ばす。震災に沈む長田で、業界の復興に向けた盛り上がりを先導。全国に120店を構え、海外にも進出した。2000年代には売上高が約110億円に達した。
しかしブームが去り、次第に風向きは変わった。業界でも次のヒット商品は生まれず、雑貨ブランドなどを拡大するが顧客離れは続いた。アパレル企業の靴事業参入、インターネット販売の流れにも対応できなかった。