瀬戸内海の漁業に異変が起きている。全国屈指のカキの産地、兵庫県西部の播磨灘で本格的な水揚げの時期を迎えた養殖ガキが大量死した。広島、岡山県でも同様の事態だ。
漁業者への支援が急がれる。国と自治体は、長期的視点で海の環境変化にどう向き合うかを考える必要がある。
兵庫県の養殖ガキの収穫量は2023年に8407トンで全国4位だった。県播磨灘カキ生産者協議会などによると大量死は今年秋以降に確認され、被害は7~8割に及ぶ。残ったカキの成長も例年より遅れているという。
全国の生産量の6割を占める広島県では、東広島市で「8~9割が死滅」との報告が相次いだ。養殖業者からは「存続の危機」と悲鳴が上がる。
斎藤元彦兵庫県知事は漁業者団体の要望を受け、12月議会の補正予算で養殖業者への支援策を講じる方針を示した。低利融資などが検討されている。
観光や自治体財政への影響も出始めた。相生市は例年2万人が集まる「相生かきまつり」を来年2月に予定していたが、やむなく中止を決めた。赤穂、たつの、相生の3市は、生ガキを返礼品とするふるさと納税の受け付けを停止した。赤穂ではカキは返礼品の目玉なだけに、ダメージは大きい。
大量死の原因を巡っては、餌となる植物プランクトンや酸素の不足などが指摘されるが、正確には分かっていない。ただ、気候変動による海水温の上昇が影響を及ぼしているのは間違いないだろう。
播磨灘、大阪湾では、春の風物詩であるイカナゴのシンコ(稚魚)漁の水揚げも激減している。県水産技術センターによると播磨灘の水温は22年までの50年間で約1・5度上昇した。暑さに弱いイカナゴには厳しい生育環境になっている。
こうした地球規模の環境変化に関係自治体だけで対応するのは難しい。国をはじめ官民が連携して大量死や不漁の原因究明を進めてほしい。まずは被害の実態把握を急ぎたい。
カキに限らず、影響が長引く可能性も考えられる。持続可能な漁業の在り方を模索することが一層重要になる。
























