川崎重工業神戸工場で生産される船舶用ディーゼルエンジン=2008年、神戸市中央区東川崎町
川崎重工業神戸工場で生産される船舶用ディーゼルエンジン=2008年、神戸市中央区東川崎町

 川崎重工業(神戸市中央区)は21日、神戸工場(同)で製造した商船向け大型エンジンで、検査データの改ざんが発覚したと発表した。2000年以降に製造した673台の全てで、窒素酸化物(NOx)排出量に関する不正が確認された。同社は第三者による特別調査委員会を近く立ち上げる。国土交通省は対象エンジンの製造拠点である同工場に22日に立ち入り調査をする。

 同社によると、IHIと日立造船の各子会社による同様の不正を受けて、国交省が要請した社内調査で発覚した。同工場でエンジンを試運転した際、燃料消費率を実際とは異なる数値に書き換えていたという。取引先の仕様に基づく許容値に収めたり、各種データのばらつきを抑えたりするのが目的だった。NOx排出量に影響を与えた可能性があり、影響の程度を追加調査で確認する。

 673台のエンジンは、自社を含む造船会社が建造した商船に搭載され、96%に当たる646台が外国籍の船向けだった。NOx排出量は国際海事機関(IMO)が定めるグローバルな規制。排出量が規制値を上回っていれば、影響は全世界に及ぶことになる。

 同社は「安全性に影響する事案は現時点で確認されていない」とし、業績への影響は「精査中」とした。潜水艦など防衛省向けのエンジンで不正はなかった。

 川重では22年、子会社の川重冷熱工業(大阪市)で空調システム用機器の検査不正が発覚。川重本体での検査不正は初めてだが、潜水艦の修理契約に絡む裏金で海上自衛隊員に金品などを提供していた疑惑が今年7月に発覚するなど、コンプライアンス(法令順守)を巡る問題が相次いでいる。(高見雄樹)