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江戸時代中期に大坂の浮世絵師・長谷川光信による「日本山海名物図会」に描かれた「カワタロウ」。体毛に覆われている(国際日本文化研究センター提供)
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江戸時代中期に大坂の浮世絵師・長谷川光信による「日本山海名物図会」に描かれた「カワタロウ」。体毛に覆われている(国際日本文化研究センター提供)
カッパがいると伝わるうるしが淵=西宮市名塩木之元付近
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カッパがいると伝わるうるしが淵=西宮市名塩木之元付近
江戸末期に両国橋のたもとに現れたカッパ。現在流布される原型となる江戸型の姿で描かれている(国際日本文化研究センター提供)
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江戸末期に両国橋のたもとに現れたカッパ。現在流布される原型となる江戸型の姿で描かれている(国際日本文化研究センター提供)

西宮・うるしが淵 川の危険を伝える未確認生物

 河原に懐中電灯が瞬き、「おーい」と人を呼ぶ声がこだました。その夜も、西宮市北部の「うるしが淵」で捜索があった。

 武庫川の川筋が大きくうねり、渓谷の崖に水流がぶつかる先に、その淵はある。半世紀前は河原にキャンプ場が点在し、何度も水難事故が起きていたのだ。

 「カッパに引き込まれるから近づいたらあかん」。近くにある木元寺の住職・岩城隆宣さん(64)は子どもの頃、事故があるたびに大人から聞かされた。

 水難調査などを手がける河川財団(東京)によると、淵の中には、水面から把握できない渦のような複雑な流れが発生している。

 「昔はカッパで子どもを脅して近づかせないようにしたんだろう。でも何も知らない観光客もいてね…」

 岩城さんはそう振り返るが、いつしか伝承は地域からも消えてしまった。

 もはや人々に恐れられる存在ではなくなったのか。県立歴史博物館学芸課長の香川雅信さん(53)は、1950年代からの急速なキャラクター化を指摘する。

 「かっぱっぱ♪ ルンパッパ♪」。酒蔵会社のCMソングで知られた漫画家・清水崑さんの作品をはしりにカッパブームが起きると、カッパをマスコットキャラに使う自治体や企業も増えた。

 それらの姿に共通するのは、肌はカエルのようで、頭にお皿、背中に甲羅…。しかし、香川さんはこれを江戸時代に広がった「江戸型」が原型になっているとし、そのイメージは各地で違っていたと説明する。

 関西では、カワウソやサルに近いような毛深い獣と想像され、そもそも呼び名も「カワタロウ」「カワロウ」が主流だった。室町時代の辞書「下学集(かがくしゅう)」にも「獺(カワウソ) 老いて河童(カワロウ)になる」と記されているという。

 「実際にいる『未確認生物』と考えられていた。だからこそ、川の危険を伝える存在として恐れられてきたんです」

 では、冒頭のうるしが淵にカッパはいなくなったのだろうか。岩城さんはこう続けた。

 「一帯は宅地開発が進み、川で水遊びをする子どもはいなくなったが、淵が危ないのは今も同じだ」

 自然の驚異は変わらない。今も川底にいるかもしれない。

=おわり=

     ◇

【メモ】カッパ伝承は県内でも無数にあり、三田市高平地区には、川の堤防に穴を開けるいたずら者のカッパを村人が退治し、背丈は90~120センチで、頭はとがってビリケンのようだったと伝わる。他にも姫路市の「穴淵」「どんどが淵」、丹波市の「蔵ケ淵」でも伝承が残る。妖怪でありながら、豊作祈願や水難よけの御利益がある「水の神様」として信仰の対象としている地域もある。

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(6) タケブンカニ
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