「だまされる」体験を通して特殊詐欺被害を防ぐキャンペーンが兵庫県尼崎市内であった。県特殊詐欺対策サポーターでプロ野球・阪神タイガースOBの糸井嘉男さんらが人工知能(AI)による「詐欺電話」に応対。分かっていても知らず知らず個人情報を漏らしてしまうなど「自分は大丈夫」と思う危険性を訴えた。(広畑千春)
被害が急増する中、同市と県が企画した。同市は2022年から東洋大の桐生正幸教授(犯罪心理学)と富士通(東京)と共同で、だまされた側の心理を基にした研究に着手。これまでに犯人の手口を学習した生成AIを使って詐欺電話を模擬体験し、危険度を判定する訓練ツールを開発した。
この日は糸井さんと松本真市長がツールを体験し、危険度はそれぞれ「90%」と「80%」だった。プレゼンテーション的な面もあったが、コールセンター風の口調で「本人確認のために生年月日を」と言われて答えてしまう場面もあった。一般の高齢者ら12人も参加。糸井さんらの「教訓」のおかげか危険度は20~50%だったが、市内の男性(74)は「もし本当の詐欺電話なら同じように対応できるか」と話していた。
研究によると「不安が安心に変わった状態」が最も危険で、慎重な人ほど一度信用すると最後まで振り込んでしまう傾向があるという。糸井さんは「自分はだまされやすい性格。皆さんも(詐欺電話がかかってきやすい)固定電話には気を付けて」と呼びかけた。