ロボットアニメ「アクエリオン」シリーズなどのアニメーション監督河森正治さん(65)が作品やデザインへの思いを語る催しが7日、宝塚市武庫川町の手塚治虫記念館であった。午前と午後の部にそれぞれ約50人のファンらが参加。河森さんは「目に見えないコンセプトやテーマ、機能、感情に形を与えること。自分はそれをデザインと呼んでいる」と流儀を語った。
同館ではアクエリオンシリーズの放送開始から20周年を記念する企画展が開かれており、関連でトークショーが実施された。
午前の部のテーマはデザインとオリジナリティー。河森さんはまず、自身が考えるデザインの定義を説明した。一般的には形や見た目の格好良さがイメージされるが、それは河森さんにとっては「スタイリング」で、デザインは「何かしら物理的な機能を持っていること」とした。
その上で「絶対に必要なのは世界観」。自身が手がける別のロボットアニメ「マクロス」シリーズを例に「航空機が変形するという世界観なので、航空力学に沿った形にしないといけない。世界観から切り離してデザインはありえない」と持論を述べた。
アニメ制作の最中、思い付きで変更することもあるといい、「ものづくりの設計図には2種類ある」と強調。一つは精密さが求められる機械的な設計図だが、アニメ制作で河森さんが考えるのはもう一つの「生物的な設計図」だという。同じ遺伝子を持った植物でも種がまかれる場所によって育ち方が違うように、アニメ制作でも「核となるテーマやコンセプト、世界観がぶれなければ、種をまいた時代とスタッフによって育ち方が違ってもいい」とした。
オリジナル作品を生み出すため、ロケーションハンティング(ロケハン)ならぬ「インスピレーションハンティング」に出かけるといい「インスピレーション(ひらめき)はどこでいつ起きるか分からない。だからオリジナルができるんじゃないかな」と話した。(吉田敦史)