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「人生のあらゆる経験が小説の糧になっている」と話す柳谷郁子さん=姫路市内
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「人生のあらゆる経験が小説の糧になっている」と話す柳谷郁子さん=姫路市内

 播磨の文芸同人誌「播火」の前編集長、柳谷郁子さん=兵庫県姫路市=が、同誌の掲載作品を集めた短編集「となりの男」を出版した。小説を書くことの意味を問う表題作など4編を収録。時に作者自身とも重なる登場人物たちを通し、社会の片隅で懸命に生きる人々の心のあやを生々しく描き出す。(平松正子)

 柳谷さんは長野県岡谷市出身。早稲田大卒業後、夫の出身地である姫路で、小説やエッセーを執筆してきた。「諏訪育ち」「美しいひと」など多くの著作があり、大阪女性文芸賞や小諸・藤村文学賞を受賞。新著には、ここ3、4年の近作を厳選してまとめた。

 巻頭に置いた「ユタの肖像」は、遠い学生時代に交わした約束を支えとし、10年ごとに東京・高田馬場の喫茶店を訪ねる女性の物語。続く「桜かがよう声よ」では、司法試験浪人を続ける息子を見守りつつ、老いたしゅうとの世話に追われる主婦の日常をつづる。本作には、柳谷さん自身の介護体験などが投影されているという。

 「となりの男」は、勤めの傍ら小説家を目指す主人公のもとへ、かつての同級生・湯川が自作の原稿を持ち込んできたところから始まる。ずっと軽蔑してきた湯川が並ならぬ才能の持ち主なのではないか? 嫉妬と疑念の中、主人公は湯川をモデルにした小説を構想する。

 最後の「水門」は、柳谷さんの生まれ育った諏訪湖畔の村が舞台。訳あって祖父母に育てられている少女ミツの視点から、小さな村の濃密すぎる人間関係や古いしきたりが、鮮やかに映し出される。特に、少女の家の離れに住み、毎日村人たちを呪(のろ)って暮らす女ウノの描写がすさまじい。

 柳谷さんは「自分の中にある、ほんの小さな種をつまみ上げ、大事に育て上げるように小説を書いてきた。私自身も含め、何食わぬ顔をして暮らしている普通の人々が、ひそかに抱える苦悩や罪深さを描き出したい」と話す。

 幻冬舎メディアコンサルティング刊、1320円。

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