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「津軽じょんがら節」を演奏する中村卓也さん(右)と見守る知世さん=姫路市網干区余子浜
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「津軽じょんがら節」を演奏する中村卓也さん(右)と見守る知世さん=姫路市網干区余子浜
和楽器店「あこや中むら楽器店」=姫路市網干区余子浜
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和楽器店「あこや中むら楽器店」=姫路市網干区余子浜
中村卓也さん(左)を指導する小田島徳旺さん(中村さん提供)
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中村卓也さん(左)を指導する小田島徳旺さん(中村さん提供)
小田島徳旺さん
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小田島徳旺さん

 津軽三味線の全国大会で優勝を重ねるすご腕の15歳が、兵庫県姫路市にいる。網干中学校を卒業したばかりの中村卓也さん。プロ奏者を目指し、仙台市に住む師匠のもとで内弟子になることを決めた。「1日たりとも無駄にしたくない」。コロナ禍で仙台行きは遅れているが、通信制の高校で学びながら、ひたむきに三味線の腕を磨いている。(地道優樹)

 5月中旬、中村さんの自宅を訪ねると、津軽三大民謡の名曲「津軽じょんがら節」を演奏してくれた。激しいバチさばきで曲が始まり、細かく刻まれていく音色が小気味よく、力強かった。

 「若い人で興味を持ってくれる人は少なくて」と苦笑いしながらも、「日本人が本能的に良いと思うものがある」と中村さん。礼儀正しく、15歳とは思えないほど落ち着いた物腰だが、津軽三味線の魅力を語り始めると熱がこもる。

 実家は、明治時代から続く老舗和楽器店「あこや中むら楽器店」(同市網干区余子浜)。琴や三味線、和太鼓に囲まれて育った。1歳半の頃には、地元の音楽イベントで沖縄の伝統芸能エイサーを踊っていたといい、本人は今も「民謡オタク」を自称する。

 幼少期から4代目店主の祖父、泰三さん(71)に三味線や和太鼓も教わった。津軽三味線に出合ったのは10歳のとき。泰三さんの勧めで津軽じょんがら節のCDを聴き、「打楽器のような迫力」に魅了された。

 独学で弾き始め、朝から晩まで演奏に没頭した。6年生になると、秋田県に本部をおく「三絃小田島流(さんげんおだしまりゅう)」に入門し、神戸や大阪の教室に毎月欠かさず通うようになった。

 めきめき実力を伸ばし、中学1年のとき、滋賀県で開かれた全国大会(15歳以下の部)で初優勝した。翌年には、全国規模の大会で高校生の部や大人を含む一般の部に出場し、相次いで制覇した。周囲を圧倒する技量が認められ、小田島流宗家から「中学を卒業したら内弟子にならないか」と声が掛かった。

 「津軽三味線が生活の一部」となっていた中村さんは、弟子入りを1人で決断。母知世(ちせ)さん(46)に告げた。知世さんは三味線奏者で、内弟子となった同世代の奏者を間近で見てきただけに「あの生活を息子にさせるのはかわいそう」と親心が先に立ったという。

 「でも中途半端が通用する世界じゃない。何より止めて聞かへんのも分かっていた」。知世さんは思い直し、長男の覚悟を信じることにした。

    ◇    ◇

 中村さんの練習量は1日に12時間を超えることもざらだという。夕飯後、防音設備のある自室にこもり、深夜3時まで弾き続けることもある。プロの演奏動画を見ながら、バチを当てる角度や強弱、弦の押さえ方を研究。「寝るのは力尽きたとき」だ。

 ストイックな15歳は「練習を苦痛に感じたことは一度もない」と言い切る。「迫力で観客を引き込み、クリアな音色で聴かせ、繊細な表現で泣かせる。自分なりの世界を表現できるのが面白い」

 何がここまで中村さんを引きつけるのか。津軽地方の民謡の伴奏として独自に発展してきた津軽三味線。中村さんにとっての魅力は「即興性」だという。「歌い手さんの節回しに合わせて心地良い音色を探っていく。舞台上での言葉にならないやりとりがたまらないんです」と笑顔を見せる。

 最近はピアノやバイオリン奏者と協演する機会も増えた。来年、東京芸大に通う琴奏者とCDを出す予定もある。演奏の幅を広げようと、ジャズの名曲「スペイン」も練習する。

 「津軽三味線の堅苦しいイメージを壊したい」。夢を追いかけ、今日も遅くまで練習が続く。

    ◇    ◇

■小田島流2代目家元「精進すればトップに立てる」

 中村さんが内弟子入りするのは、小田島流2代目家元の小田島徳旺(とくおう)さん(55)=仙台市。日本を代表する津軽三味線奏者で、現在プロで活躍する浅野祥(しょう)さん(31)ら数多くの若手を育成してきた。

 内弟子は師匠宅に住み込み、掃除や洗濯はもちろん、買い出しや着物のアイロン当てなどもこなす。師匠の演奏会に同行して、自らも出演もしながら腕を磨いていく。

 中村さんは今年4月に弟子入りする予定だったが、コロナ禍で先送りに。演奏会の開催中止も相次いでおり、収束するまでは、住み慣れた環境で練習を続けることにしている。

 小田島さんは「卓也は精進すれば間違いなくトップにいく才能の持ち主。歌い手に合わせた伴奏や、曲を聴かせる技術は舞台でしか学べない。音楽的な感性を磨けるよう場数を踏ませたい」と話す。

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