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大天井岳山頂で一息つく植田将志さん。手製の看板に赤いバンダナがトレードマークだ=姫路市夢前町山之内
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大天井岳山頂で一息つく植田将志さん。手製の看板に赤いバンダナがトレードマークだ=姫路市夢前町山之内
植田将志さんが売り歩く雪彦山の登山バッジ
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植田将志さんが売り歩く雪彦山の登山バッジ
大天井岳山頂で登山者と談笑する植田さん(左)=姫路市夢前町山之内
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大天井岳山頂で登山者と談笑する植田さん(左)=姫路市夢前町山之内
遠くにそびえ立つ大天井岳=姫路市夢前町山之内
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遠くにそびえ立つ大天井岳=姫路市夢前町山之内
植田将志さんが売り歩く雪彦山のバッジ=姫路市白銀町
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植田将志さんが売り歩く雪彦山のバッジ=姫路市白銀町

 「マッチ売りの少女」ならぬ「バッジ売りのおじさん」がいる-。都市伝説のような“目撃情報”が、会員制交流サイト(SNS)に投稿されている。現場は、兵庫県姫路市の北端に位置し、ロッククライミングの名所として知られる雪彦山(同市夢前町)。調べてみると、おじさんの名は姫路在住の植田将志さん(79)。ボランティアで登山道を整備する傍ら、登頂記念のバッジを売り歩いているそうだ。秋の登山シーズンを迎え、雪彦山のアイドル的存在になっている植田さんに、山の魅力を紹介してもらった。(森下陽介)

 9月下旬、SNSで人気の「バッジ売りのおじさん」こと、植田さんに同行し、雪彦山に登った。

 雲一つない晴天で絶好の登山日和。午前8時ごろ、トレードマークの赤いバンダナを頭に巻いた植田さんの姿が登山口にあった。ザックを担ぎ気合を入れると、慣れた様子でスイスイ登り始める。「昔は山頂まで1時間で行けたけど、今は2倍かかる。技術は上がったが、年には勝てない」。それでもスムーズな足どりで一歩一歩、地面を踏みしめ、登っていく。

 時折足を止めては、道迷いを防ぐ目印を赤い塗料のスプレーで吹き付ける。急な岩場に張られたロープも注意深く観察し、劣化が進んでいないか確認する。「何度もけが人を運んで下山し、時には亡くなった人を見たこともある。大好きな山で事故が起きないよう、手は抜けない」と話す。

 2時間ほどかけて雪彦山の大天井岳山頂へ。ほこらの隣が植田さんの定位置だそうで、固形燃料に火を付けて昼食の準備を始めた。この日のメニューはアジのみりん漬け。調理済みの魚を軽くあぶると、頂上にはおいしそうな香りが広がる。「絶景を眺めながら食べるご飯も、登山を続ける原動力になっている」

 食事を取っていると、他の登山客も続々とやって来た。立てかけた「バッジあります」の看板に気付き、購入希望者が集まる。登山バッジを集めているという明石市の会社員の男性(54)は「ネットで見て植田さんに会えたらいいなと思いながら登った。すごくラッキー」とバッジを大事そうにしまった。

 1時間ほど休憩した後、ゆっくり下山を始める。「今日も無事に山を降りてこられた」。安心感に加え、苦しい時間を乗り越えた達成感に満たされる。「何回登ってもつらいのが登山。けれど、それ以上に充実感が得られるのが一番の魅力」と植田さん。「これからも体力が続く限り登り続けたい」と言い切った。

■大好きな山、事故防ぎたい

 鳥取県で生まれ育った植田さんは、名門・米子東高校ボート部の出身。高校卒業後に姫路に移ってからもスキューバダイビングを趣味として、国内外の海に潜ってきた。「かつては根っからの海男。今とは真逆だった」と植田さん。登山に初めて触れたのは50歳を迎えた頃だった。

 最初は暇つぶしがてら、だった。書写山や広峰山、高御位山など播磨地域の低山を中心に登り続けた。本格的にのめり込んだのは1995年。阪神・淡路大震災の影響で、当時よく利用していた六甲山の登山ルートを通れなくなり、地元にある雪彦山に足を向けるようになった。

 登山口から早速始まる急登坂や、全国から愛好家が集まる険しい岩場もある。腕がしびれて悲鳴を上げるような長い鎖場に、瀬戸内海まで見渡せる頂上からの絶景に魅せられた。植田さんがかつて潜っていた海や、他の山では得られなかった満足感があった。「雪彦山には山の魅力が凝縮されている」と語る。雪彦山への登頂回数は記録が残るだけでも2千回を超える。

 何度も登る中で、道中の危険な場所が気になり、自ら登山道の整備にも手を付けた。愛用のザックにロープやのこぎりなど道具を詰め込み、山に入る。土砂崩れで100本ほどの木が道をふさいだときは、チェーンソーを使って2カ月がかりで取り除いた。

 登山道整備をしながら、大好きな山を登り、満喫する-。そんな生活が板につき始めた頃、雪彦山の登頂記念バッジ販売をしていた人が引退することになり、植田さんが仕事を引き継いだ。横長のバッジは雪彦山の山並みをデザインしてあり、幅は500円玉サイズ。登山客がコレクション用に買い求めるなど、根強い人気があるという。

 「インターネットの影響で今ではバッジで有名になってしまった」。植田さんは、そう苦笑しながらも、客との出会いが醍醐味(だいごみ)という。

【雪彦山】大天井岳(標高811メートル)を主峰に四つの峰からなる洞ケ岳と、鉾立山、三辻山の三山を指す総称。最も高い場所は標高915メートルという。古くから修験者の修業の場として知られ、新潟県の弥彦山、九州の英彦山と並び「日本三彦山」に数えられている。中国自動車道夢前スマートインターチェンジ(IC)から車で約20分。登山口近くに駐車場もある。

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