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市内で唯一の弓引き行事が行われる水尾神社。本殿は市文化財に指定されている=姫路市安富町関
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市内で唯一の弓引き行事が行われる水尾神社。本殿は市文化財に指定されている=姫路市安富町関
水尾神社本殿の棟札。左の札には「暦応元年」(1338年)と記されている=姫路市安富町関
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水尾神社本殿の棟札。左の札には「暦応元年」(1338年)と記されている=姫路市安富町関
古式での弓引きを披露する岸本武雄さん=姫路市安富町関
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古式での弓引きを披露する岸本武雄さん=姫路市安富町関
古老の記憶をたよりに復活させた神事。地面を弓で払うような動きから、この地の魔をはらう意味があるとされる=姫路市安富町関
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古老の記憶をたよりに復活させた神事。地面を弓で払うような動きから、この地の魔をはらう意味があるとされる=姫路市安富町関
そろいの裃姿で神事に取り組む参加者たち=姫路市安富町関
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そろいの裃姿で神事に取り組む参加者たち=姫路市安富町関

 わずか9世帯13人が暮らし、平均年齢が80歳を超える“限界集落”で、地元の伝統神事を復活させ、継承していこうと奮闘する地域がある。兵庫県姫路市の北端に位置し、「平家の落人伝説」が残る同市安富町関地区。昨年、「弓引き行事」を古式にのっとり、約60年ぶりに復活させた。集落の住民たちに力を貸したのは、中高校生や近隣自治会員、ボランティアら。「一度きりでは終わらせない」。市内で唯一となった弓引き行事の存続、継承を目指す人たちに、活動の軌跡と行事にかける思いを聞いた。(森下陽介)

 神事が伝わる同地区の水尾神社は、鎌倉時代や南北朝時代の棟札が残るなど、由緒ある神社。弓矢を射る神事は毎年10月の秋祭りの一環として受け継がれ、その地の邪気をはらい五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈る意味があるとされる。始まりは不明だが、市が2016年に実施した調査では市内で唯一続いていることがわかった。

 関地区では2年前まで、神事を略式で受け継いできた。高齢化、過疎化が進むにつれて神事の継続が難しくなる中、安富北地区連合自治会(古井重次郎会長)が協力。担い手が増えたことで、昨年、古式にのっとった神事の復活に挑戦することにした。

 公民館に保管されていた弓は劣化が進んでいるものもあり、市内の弓師に依頼して作り直した。集落に残っていた弓と合わせ、長さ約2メートル20センチの弓計4本をそろえて祭りに備えた。

 神事の様式は集落の古老・岸本武雄さん(90)の記憶をたよりに再現した。岸本さんは10代のときに弓引き行事を体験。「弓を持つ手を高く掲げて矢をつがえ、そのまま下ろして射る。きりりと引き絞る通常のものとは全く違う独特のやり方やねん」と当時の作法を語る。また、集落に130人を超える住民がおり「希望者が多すぎて弓が引ける人は抽選だった。人が減りどんどん簡略化していった」と振り返る。

 市教育委員会文化財課の宇那木隆司さんは一般的な弓道の射法や流鏑馬(やぶさめ)とは異なる独特の射法に「落人伝説の残る土地なので、実戦的な射法が神事に転じたのでは」と推測。甲冑(かっちゅう)を着たままでは肩を守る部分が邪魔をして弦を引きにくい。両手を上げるのは、よろいを身に着けたまま弓を扱う工夫だったと予想する。

 また、関地区を含む一帯がかつて「安志庄(あんじのしょう)」と呼ばれ、京都・上賀茂神社の荘園であったことにも着目。同神社では弓を射て邪気をはらう「武射(むしゃ)神事」が行われており「荘園のつながりで弓を用いた神事演芸が伝わった可能性もある」と指摘する。

 昨年10月上旬、水尾神社の秋季例大祭本宮当日は、氏子を中心に約25人が境内に集まった。神事が執り行われ、古式での「復活」は無事に成功。次は文化を後世につなぐ「継承」に向けて動き出した。

 「せっかく復活してんから。できる限りは頑張って受け継いでいきたいんや」。宵宮の10月16日、集落内に秋祭りのちょうちんを設置して回った関自治会の岡本重富自治会長(76)が力を込めた。昨年に続いて古式にのっとった神事を行おうと、関係者に参加を呼び掛け、準備を重ねてきた。

 本宮の17日、氏子や近隣住民、ボランティアなど計約30人が顔をそろえた。水尾神社拝殿で真田慶樹宮司が祝詞を読み上げた後、弓引き行事の会場や伝統の裃(かみしも)姿の射手4人も清めた。

 神事の弓引きでは、古老の岸本さんがトップバッターを務めた。この地に伝わる独特な射法で、胸を張りながら力強く弦を引く。約25メートル先にある直径約40センチの的に狙いを定める。つがえた鏑矢(かぶらや)を放つと、笛のような高い音が響き、参加者から大きな拍手が送られた。

 続いて、安富中3年の木山翼さん(15)らボランティア4人も弓を手に取った。互いに向き合いながら、弓で地面をはらうような所作を披露した。木山さんは昨年、見学のみで、矢を放つのは初挑戦。結果は惜しくも的を外した。「ど真ん中を狙ったけど難しい。歴史ある行事なので、文化の継承を手伝えてよかった」と胸を張った。

 昨年に続き、秋祭りには大勢の参加者や見学者が集まった。古式にのっとった神事も終始にぎやかで無事終えた。岡本さんは「長い間受け継いできた大切な行事。この調子で来年も再来年もずっと続けていきたい」と満足げに語った。

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