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東芝デバイス&ストレージの姫路半導体工場=太子町鵤
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東芝デバイス&ストレージの姫路半導体工場=太子町鵤
東芝製半導体の製品を紹介する栗原紀泰さん。中には極小の半導体もある=姫路半導体工場
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東芝製半導体の製品を紹介する栗原紀泰さん。中には極小の半導体もある=姫路半導体工場
さまざまな形状の半導体
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神戸新聞NEXT
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【上】カワバタモロコの「楽園」となっている池【下】カワバタモロコ(姫路半導体工場提供)
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【上】カワバタモロコの「楽園」となっている池【下】カワバタモロコ(姫路半導体工場提供)

 世の中の隅々にまで行き渡っているのに、意外と目にしたことがないもの-その代表格は半導体だろう。「電気を通す導体と、電気を通さない絶縁体の中間の性質を持つ電子部品」と聞いてもピンとこないが、自動車や家電など、あらゆる製品に組み込まれている。数々の半導体を開発してきたのが、東芝グループの姫路半導体工場(太子町鵤)。4月に発足40年を迎える一方、東芝が描く「戦略的再編」の対象にもなっている。工場の役割は変わるのか-。「工場長」である栗原紀泰ゼネラルマネジャー(54)に聞いた。(段 貴則)

「工場発足40年、挑戦続ける」

 -半導体とは。

 「コンピューターの中央演算処理装置(CPU)は『頭脳』と言われるが、よくニュースに取り上げられるパワー半導体は『筋肉』に例えられる。銀行のサーバー室など大きな電力を制御できる。ワイヤレスイヤホンなどに使う小信号デバイス、電気鉄道用モーター駆動装置などに使うハイパワーデバイスのような特色ある製品もある。電力効率の高い半導体は、脱炭素社会の実現にも役立つ」

 -半導体は、その重要性から「産業のコメ」とも呼ばれてきた。

 「『産業のコメ』と言われ始めた頃よりも、半導体の重要性は高まっている。今は、コメはコメでもブランド米。半導体メーカーは送配電や通信などの用途や顧客の『好み』に合わせた製品を開発し、幅広くそろえている。昔は一方通行のものづくりだったが、今は顧客と双方向だ。特色のある半導体を製造する会社でなければ生き残れない」

 -姫路半導体工場の特長は。

 「いつの時代も新しい半導体を手掛けてきた。小型化競争の最前線だった。実装できる限界まで行き着いた。また、生産効率の高い製造ラインを開発し、グループ内で横展開するなど、ここで培った技術を『輸出』してきた」

 「シリコンと炭素が結合した結晶を使う炭化ケイ素(SiC)パワー半導体は、従来のシリコンと比べ、高いポテンシャルがある。姫路はグループ内で唯一の量産拠点。また、車載向けの半導体組み立ての主力工場でもある。開発部隊もいる。姫路の特長の一つとして大切にしたい」

 -東芝は24日、臨時株主総会を開いて、姫路半導体工場を含むデバイス事業の会社分割案を諮る。工場の位置付けに変化は。

 「社会に貢献するため、姫路半導体工場が持つ能力をめいっぱい使い、生産していかなければならない。会社の形が変わったとしても、その点は変えてはいけない。生産の減速や方向転換など、ネガティブな選択肢はない。カーボンニュートラルも含め、世の中のメガトレンドを踏まえれば、ますます半導体が必要になる。例えば、高速通信で滑らかな動画を見ている人たちは、昔のカクカク動く映像には戻れない。走行距離が伸びた電気自動車も同じ。世の中の大きな流れを半導体が加速させる役割を担う。40年の歴史を持つ姫路半導体工場が、東芝グループの半導体製造拠点の『長男』としての自負を持って取り組んでいきたい」

希少種保護へ地域と連携

 姫路半導体工場には、絶滅危惧種の淡水魚を飼育する池がある。兵庫県のレッドデータブックでAランクに指定されるコイ科のカワバタモロコ。現在、150匹まで増やしている。

 データブックによると、日本固有種で全長4センチほど。県内ではかつて揖保川などにも生息していたが、現在は武庫川と加古川流域の隔離された小さなため池「十数カ所のみ」という。

 同工場では2013年から、兵庫県立大学と姫路市立水族館と連携し、飼育を開始。地元の斑鳩小学校児童による放流などを通じ、個体数の増加に取り組んでいる。

【くりはら・のりやす】1992年入社。一つの動作目的に対して一つの機能のみを持つシンプルな「ディスクリート半導体」の事業部で長年、技術部門を担当。2013年には姫路半導体工場で小信号半導体開発技術部長も務めた。19年11月から現職。

【姫路半導体工場】戦前、東京芝浦電気(後の東芝)の播磨進出に伴い、潜水艦用の蛍光ランプの製造拠点として用地を取得。起工式も行ったが、操業には至らなかったという。太子工場として1960年に操業を始め、カラーテレビのブラウン管生産を担った。東芝姫路工場(姫路市余部区上余部)の太子地区という位置付けだったが、82年、半導体部門が分離、独立。「ディスクリート」と呼ばれるシンプルな機能を持つ半導体の開発、設計、製造の拠点として姫路半導体工場を名乗った。現在は東芝グループの半導体製造会社、東芝デバイス&ストレージに属す。次世代材料の炭化ケイ素(SiC)パワー半導体などを生産している。総面積22万4千平方メートル、従業員数は約1400人。

【連載一覧】
(上)関東の名門が描いた大構想
(中)住民が従業員「地域の誇り」

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