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姫路交響楽団と共演して、ハーモニーを奏でる子どもたち=姫路市辻井9、パルナソスホール
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姫路交響楽団と共演して、ハーモニーを奏でる子どもたち=姫路市辻井9、パルナソスホール
入講式に参加した1年生たち=姫路市神子岡前3、面白山児童センター
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入講式に参加した1年生たち=姫路市神子岡前3、面白山児童センター
50年以上にわたって講師を務める藤井たみ子さん=姫路市神子岡前3、面白山児童センター
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50年以上にわたって講師を務める藤井たみ子さん=姫路市神子岡前3、面白山児童センター
楽器の持ち方を学ぶ基礎練習。木の棒と発泡スチロールを組み合わせた道具をバイオリンに見立てる=姫路市神子岡前3、面白山児童センター
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楽器の持ち方を学ぶ基礎練習。木の棒と発泡スチロールを組み合わせた道具をバイオリンに見立てる=姫路市神子岡前3、面白山児童センター
真剣な表情でレッスンに励む子どもたち=姫路市神子岡前3、面白山児童センター
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真剣な表情でレッスンに励む子どもたち=姫路市神子岡前3、面白山児童センター

 全国的にも珍しい公設のバイオリン教室が兵庫県姫路市内にある。同市神子岡前3の面白山児童センターで毎週日曜日、71人の小学生が腕を磨く「姫路市ヴァイオリン教室」だ。9月中旬には毎年恒例の定期発表会を開き、6年に一度だけ行う姫路交響楽団との共演も大成功を収めた。今春、教室に入り、こつこつと練習を重ねてきた子どもたちが、大舞台に立つまでの半年間を追いかけた。(森下陽介)

 4月上旬、新1年生を教室に迎える入講式が開かれた。おめかしした児童12人が、6年間指導に当たる9人の講師と対面。順に名前を呼ばれ、期待に胸を膨らませながら満面の笑みで大きな返事をしていた。

 入講する児童の多くは、楽器の持ち方も楽譜の読み方も分からないバイオリン未経験者だ。1966年の教室開講時から指導する藤井たみ子さんは「正しく持てたら、正しく弾ける」と繰り返し指導する。

 入講当初のレッスンは、持ち方から学び始める。発泡スチロールと木の棒を組み合わせた道具を使い、あごと左肩に挟んで安定させる。ようやく本物を持つことが許されても、今度はバイオリンがこすれて肩がひどく痛む。慣れない姿勢に顔をゆがめながら、懸命に基礎練習に励んでいた。

 低学年は「きらきら星」など比較的簡単な童謡で練習するが、上級生のクラスは大人顔負けだ。ビバルディやバッハなどのバロック時代の名曲を演奏する。6年の足立実優さん(11)は「最初は練習が厳しくて投げ出したくなる毎日だったけど、思ったメロディーが弾けるようになると楽しくなった」とほほ笑む。

 週に一度の教室は毎回、真剣勝負。ただ新型コロナウイルス禍に伴い、レッスン時間を縮小したほか、夏休みの強化合宿も3年連続で中止した。

 「発表会に間に合わない」。練習量の減少に保護者から不安の声が漏れる中、講師陣は一層、限られたレッスンに熱を入れた。1曲の中で数カ所ある難所を集中的に教え、メリハリをつけた練習を意識。藤井さんは「練習時間が減り、講師にも焦りがあった。例年以上に自主練習の大切さを繰り返し伝えた」と話す。

 また、保護者5人からなる「若葉会」が「縁の下の力持ち」として教室運営を支えた。夏の合宿開催の直前まで可能性を探り、中止決定後は、代替の合同練習会を企画。場所や日程の調整、各保護者への連絡作業をこなし、全メンバーによる合同練習会の開催にこぎ着けた。

 迎えた9月11日。児童たちは、姫路市辻井9のパルナソスホールで定期発表会本番に臨んだ。いつもよりも少し大人びた表情の児童らが、おそろいの白いシャツと紺色の帽子姿でステージに並んだ。入講した半年前、バイオリンを持つだけで精いっぱいだった1年生も、堂々とした立ち姿で演奏を披露した。客席で見守る保護者らに、成長した姿を見せていた。

 発表会の締めくくりに、姫路交響楽団との共演を果たした。曲は、チャイコフスキーの「白鳥の湖」とエルガーの「威風堂々」。オーケストラの中で大人たちとハーモニーを奏でた。「いろいろな楽器の音が聞こえる中でも、自分の音を出せるように集中した」と6年の宮田侑莉さん(11)。「家族にかっこいいところを見せられた。頑張ってきて良かった」と充実した表情で話した。

 教室のメンバーたちは10月9日、アクリエひめじ(同市神屋町)で開かれる「ル・ポン国際音楽祭」関連イベントへの出演が決まっている。中でも高学年の17人は、世界的バイオリニストで、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団第1コンサートマスターの樫本大進さんが演奏するビバルディの楽曲で伴奏を務めるという。

     ◇

■卒業後も活動継続 「姫路ユースアンサンブル」希望者が月数回の練習会に参加

 教室を卒業してもメンバー間のつながりは途切れない。1987年に有志によって結成された「姫路ユースアンサンブル」は、教室卒業生のうち希望者が月数回の練習会に参加。年に一度、発表会を開く。

 結成以前、教室を卒業した子どもたちが演奏できる場が少なく、バイオリンをやめる子どもが多かったという。そのため、ユースには現在、高校生を中心に約10人が所属。演奏を続けたいと願う中高生の受け皿となっている。

 メンバーでバイオリン教室の講師も務める寺尾昌和さん(45)は「バイオリンは取っつきにくいと思われがち。教室やユースの存在が、未経験の子どもたちが気軽に始めるきっかけになれば」と話した。

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