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ペンギンベーカリー姫路野里店前に立つ牧野光樹専務。4店目は「よい物件があれば」=姫路市野里
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ペンギンベーカリー姫路野里店前に立つ牧野光樹専務。4店目は「よい物件があれば」=姫路市野里
看板商品のカレーパン
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看板商品のカレーパン
常連客(左)と話が弾む福本卓弘さん=ホサンナ
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常連客(左)と話が弾む福本卓弘さん=ホサンナ
「ノーパブ、ノーライフ」と記したボードを手にした客を撮影する福本卓弘さん=ホサンナ
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「ノーパブ、ノーライフ」と記したボードを手にした客を撮影する福本卓弘さん=ホサンナ
姫路の繁華街の中心地・魚町通り。軒を連ねる飲食店のネオンが輝く=姫路市魚町
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姫路の繁華街の中心地・魚町通り。軒を連ねる飲食店のネオンが輝く=姫路市魚町

 新型コロナウイルス禍で3度目の師走を迎えた。兵庫・播磨地域の繁華街などで営業する飲食店にとって、この季節は本来、書き入れ時だ。だが、コロナ感染拡大期「第8波」の懸念から、街の盛り上がりはまだこれから。コロナ禍が飲食業界になお重くのしかかる中、業態の幅を広げて積極出店にかじを切ったり、新サービスを打ち出したりと攻めに転じる企業があると聞き、取材した。(段 貴則)

■看板商品のカレーパン大ヒット、出店を加速 姫路・イタリアン「アルバータ」

 「コロナ禍で痛感したのは単一業態の危うさ」。コロナ禍前、関西で「アルバータ」ブランドのイタリアンレストランなどを20店展開していたアルバータダイニング(兵庫県姫路市)の牧野光樹専務は、こう振り返る。

 営業自粛などで一時は全店舗が休業。さらに新しい生活様式の定着で、消費者が店でアルコールを楽しむ機会も減った。一部は閉店を余儀なくされ、現在、営業を続ける自社飲食店は9店にまで減った。

 コロナ禍の影響を受けにくい業態を探す中、目を付けたのがパン小売業。牧野専務は「生活に寄り添った商品で、老若男女が手にできる。需要は十分にある」と判断した。

 中小企業の新分野展開や業態転換を後押しする国の補助金を生かし、北海道発祥のパン店「ペンギンベーカリー」(本部・札幌市)のフランチャイズ店の運営に手を挙げた。昨年夏、姫路市野里に関西1号店を出すと、看板商品のカレーパンが1日千個売れるなど、大ヒット。今年に入り、神戸市垂水区にも出店した。

 コロナ禍に立ち向かう挑戦に対し、政府系金融機関の日本政策金融公庫と兵庫信用金庫(姫路市)が協調し、資金面で支援。アルバータは今夏、加古川市内に3店目を開くことができた。「コロナ禍であっても企業としてのチャレンジは必要」と牧野専務。レストランの閉店が続いた一方、パン小売りへ事業を広げ、さらに来年は飲食店の新規出店にも踏み出す。

 新たな業態としてベーカリーレストランに挑戦し、ファミリー層の取り込みを図るほか、ペンギンベーカリーで採用した若い世代の活躍の場とする。また、地魚などを使ったイタリアンの出店計画も進めている。

 牧野専務は「飲食業界がコロナ禍前と同じ形に戻ることはないのでは」と指摘。「飲食業は少ない初期投資で始められるなど参入障壁が低いだけに、新事業展開にはスピードが欠かせない。収益の太い柱を複数持ちたい」と話している。

■ほぼ原価で毎日何杯でも飲めるプランなど売り 姫路・英国風パブ「ホサンナ」

 「姫路の飲食店では初のサービスじゃないかな」。姫路市立町で英国風パブ「ホサンナ」を営む福本卓弘さんは10月、酒の定額利用(サブスクリプション)サービスを開始した。ビールなど20種類以上の酒をほぼ原価で毎日何杯でも飲めるプランなどが売り。コロナ禍や物価高で遠のく客足をつなぎとめ、パブの業態にこだわった営業を続ける。

 福本さんは30年近く姫路の繁華街でバーなどを営んできた。誰でも気軽に過ごせる英国のパブに魅せられ、現店舗がある4階建てのビルを購入。2006年から、1~3階の各フロアに35~55人を収容できる本格パブとして営業を始めた。個人客に加え、スポーツ観戦や職場単位の団体客などでにぎわった。

 転機はコロナ禍。姫路に2店舗を構えていたが、2020年春の送別会、歓迎会シーズンは、660人分の予約がキャンセルに。20年末には姫路駅南にあった店を閉じた。

 「働く世代や高齢者などが立ち寄り、一杯飲んで、本を読んだり、話をしたりする場所をつくりたくて店を始めた」という福本さん。創業の精神「ノーパブ、ノーライフ」(パブのない人生はない)を実現し、姫路のパブ文化を守ろうと、月額990~1990円のサブスクを始めた。1杯290円で何杯でも飲めるプラン、ソフトドリンクも対象にしたプランなど、計3タイプを用意した。創業精神を記したボードを手にする来店客を撮影し、インスタグラムで発信する試みも展開する。

 福本さんは「職場の忘年会を禁じる会社もまだ多くあり、今月の売り上げは例年の半分に届くかどうか。今は客足が戻るときを見据え、酒を売るだけの場ではないパブの魅力を磨くことに専念したい」と話す。同店TEL079・288・3299

    ◇    ◇

■冷え込む季節 酒席で心温めよい年を

 ビールのCMは「カァァーッ!」と、のどごしを強調するのが定番だ。ところが、先日、趣の異なる広告を新聞とテレビで見かけた。それぞれS社とK社で、いずれも「誰かと一緒に過ごす時間」の大切さを訴え、今冬をその機会と位置づけた。もちろん「ビールを片手に」という点も、控えめながら忘れずに。

 姫路の繁華街で飲食店主に聞くと「会社が公式に行う忘年会の予約は、ほぼない。少人数で、というのは増えている」という。龍野商工会議所が10月、ネット調査(回答数44人)で、今季の忘年会・新年会を聞くと「参加しても良い」「積極的に参加したい」の合計が8割を超えた。相手を複数回答で問うと「友人・知人」が18人で最多だった。

 冬は、何となく人恋しさが募る季節。コロナ禍が続いた3年分ともなれば、なおさらだ。懐かしい顔、カウンターで隣り合ったばかりの新顔…。誰かとグラスを傾ける機会をいくつ持てるか。コロナに気を付けながら心を温め、よい年を迎えたい。急激な冷え込みに、しみじみそう思う。(段 貴則)

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