「駐在さん」は休日、音楽隊の「隊長」に変身する－。兵庫県姫路市夢前町の莇野（あぞの）駐在所に勤務する福岡信哉警部補（４０）が、地域のイベントで近隣住民とともに得意のギターの演奏を披露し続けている。「莇野駐在所音楽隊」と称して活動する中で、地域では身近な存在として知られ始め、地域の活性化にも一役買っている。

　駐在所近くの莇野小学校は来年度から、特色のある少人数教育を展開し、校区外からも通学を認める「小規模特認校」へと移行する。地域に若い世代を呼び込もうと、地元有志らが多彩なイベントを開く。小学生の娘がいる福岡さんも、昨年４月に駐在所へ配属され、積極的に催しに参加するようになった。

　尼崎市出身。中学生の時、ロックバンド「ＧＬＡＹ」に憧れてギターを始めた。これまで人前で演奏することはほとんどなかったが、赴任から約１年後の今年５月、学生時代以来だったステージに立った。

　近くの広場で開かれた地域のイベントで、音楽が趣味の同校の教諭と演奏すると、観客の反応は上々。住民との距離も一気に縮まり、住民も気軽に駐在所を訪ねてくれるようになった。パトカーに手を振ってくれる人もいるなど、今ではちょっとした有名人だ。ギターの腕前も評判を呼び、出演依頼が相次いでいる。

　１１月中旬にも同校で開かれたイベントに出演。地域の人たちでつくるバンドでギターを担当し、そろいの赤いジャンパーでステージに立った。

　バンドは毎回、演奏する人が変わる。この日は莇野小４年でピアノ歴５年の次女苺々（もも）さん（１０）がキーボードを担当し、近くの女子中学生がアルトサックスとして加わった。さらに、居合わせた小学生が飛び入り参加したりとにぎやかに。流行曲や懐かしいメロディーを奏でると観客は盛んに拍手を送っていた。

　次回は地域のクリスマス会に出演予定。福岡さんは「イベントには毎回新しい人が来てくれて、やりがいになっている。演奏を始めてから地域の人とも親密になれて仕事にもいい影響がある」と笑う。