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外へ。気持ちいい=姫路市内
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外へ。気持ちいい=姫路市内
ひきこもりの経験者が集える場所。若い世代が中心=姫路市内
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ひきこもりの経験者が集える場所。若い世代が中心=姫路市内
神戸新聞NEXT
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 テレビや新聞で毎日のように見聞きするけれど、なんだか身近に感じられないことはありませんか。そう、政治の話です。新型コロナウイルス禍、物価高…。暮らしがしんどかったり、生きづらかったり。やっかいなことに、いろいろなことと切っても切り離せません。兵庫県姫路市では今年、市長と市議、それに県議を選ぶ選挙もあります。記者が政治への思い、届けたい話を聞きに行きました。

    ■    ■

 姫路市の大手前通りに面したビルの一室。由美さん(21)=仮名=とはそこで出会った。目が隠れるほど前髪が長い。

 ここは、ひきこもりを経験し、外出にまだ壁を感じる人たちが気軽に集える「まちのぷちたぷち」。姫路市がNPO法人に運営を委託している。毎回、6、7人が顔を出す。

 国の調査では、全国のひきこもりの人は15~39歳で推計約54万1千人(2015年)。親が80代、当事者が50代の「8050問題」が指摘され始めたのもかなり前のことだ。

・踏み出すとき集える場所を

 由美さんが引きこもるようになったのは5年前。高校2年生のときで、はっきりした理由はない。

 「うーん、文化系の部活に入りながら生徒会活動をしていて、両立がうまくできないのがしんどくて…。だんだんと休むようになりました。『もうダメだ』って逃げたい気持ちが強くなって、学校を辞めて、高校の友人は連絡先を全部消しちゃいました」

 これまで順調に歩んできた道から外れるような気がして怖かった。けれど、心はもう持たなかった。

 「両親は進級してほしかったと思いますけれど、親身に支えてくれました。でも、親戚に『情けないよ』って言われたんです。私はあの時、外に出たくても、周囲の人の目が気になって体が動かなかった。怠けているわけじゃないんです」

 本や漫画を読む気にもなれない。布団の中で1日が終わる日もあった。そんな暮らしが2年ほど続き、少しずつ外に出られるようになった。半年ほど前、地域の回覧板が家に回ってきた。そこに「ぷちたぷち」のチラシが挟まっていた。

 「初めは行くのに緊張しました。でも、ちょうど『なんか行動したい』と思っていた時期だったんです」

 あっ、そうだ、という表情で由美さんが続ける。

 「ひきこもりの人が置かれている状況をもっと発信してほしいです。それと、ぷちたぷちのような、1歩を踏み出そうとしたときに集える場所の情報を必要な人に届けてほしいです」

 なるほど。それが政治に期待したいことですか?

 「当事者が声を上げるのってなかなか難しいですから。ここはいろいろな人と話ができて刺激になり、気持ちが前向きになれます」

・仕事体験できる仕組み必要 

 じゃあ、これからは?

 「同学年の友人は大学に行って、就職先も決まってる子もいて、なんかすごくキラキラしています」

 再び周囲が見えるようになると、焦りも出てきたという。由美さんがふーっとため息をつく。じっと考え込み、気持ちを吐き出す。

 「仕事に就くか、学校に通うかはまだ分からないですけど、今年は自分のやりたいことを見つけたい。その時に、『トライやる・ウィーク』のような形で、まずは期間限定で仕事を体験できる仕組みがあるといいなあって思うんです」

 今の夢は自分のペースで自立すること。キラキラ輝けるように。

【プロフィル】姫路市出身。市内の公立高校に通っていたが、2年の冬に登校できなくなった。2020年夏、高卒認定試験に合格。現在は自宅近くの園芸農家で、葉ボタンの栽培を手伝うアルバイトに励んでいる。

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