神戸新聞NEXT
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 ひたむきに料理に情熱を注ぐ「食の名人」たちが姫路市内にいる。長年にわたり食文化の発展に貢献したとして、飲食関連の団体でつくる「姫路食文化協会」が2019年から認定し、これまでに12人が選ばれた。それぞれ秘伝のレシピや磨き上げた調理の腕を強みとするが、一番の味の決め手は料理へのあふれんばかりの愛情だ。名人たちのこだわりに迫った。(森下陽介)

■「京町クロケットファミリー」長谷川榮一さん(82) 60年の歩み詰め込んだコロッケ

 姫路市京町の住宅街の一角。店前に掲げるのぼり旗が見えると、揚げ物の香ばしい香りが漂ってきた。「京町クロケットファミリー」。テーブルが三つだけ並ぶこぢんまりとした店に入ると、この道60年のシェフ長谷川榮一さん(82)が厨房で鍋を振るう姿が見える。「いらっしゃい」