石古覚さん
石古覚さん

 秋の叙勲が発表された。北播磨の受章者のうち5人の喜びの声を聞き、歩みを振り返ってもらった。

■震災教訓、地域の安心守る

 瑞宝小綬章(北はりま消防組合消防正監)

  石古覚(いしこさとる)さん(70)=加東市藤田

 1995年1月17日、神戸市長田区。炎に包まれた商店街で、休む間もなく放水を続けた。防火水槽は空っぽ。海水をくみ上げ、3日間にわたって消火にあたった。阪神・淡路大震災での活動は強く胸に刻まれている。

 現地へ向かい、新神戸トンネルを抜けると、倒壊した建物と燃えさかる街が広がっていた。「あまりにも大きい災害。自分の非力さを痛感した」。以後、災害時に組織的に動ける体制の重要性について、後輩たちに語り継いできた。

 現場を離れた後は、北はりま消防組合で通信指令の一本化などに取り組んだ。藤田地区の区長となった今、「受章に恥じないようにしたい」と決意を新たにし、高齢者の多い地域の安心を支える。(井筒裕美)

■議会の政策提案に尽くす

 旭日双光章(元西脇市議会議長)

  池田勝雄(いけだかつお)さん(70)=西脇市黒田庄町前坂

 旧黒田庄町出身。高校の頃から差別解消や人権問題に関心があった。機関紙の記者になり、さまざまな社会課題と向き合った。1992年、地元の要請を受け、同町議に。同町と旧西脇市の合併後は西脇市議を務め、議長も経験した。

 「議会は常任委員会が重要。そこで政策提案ができる集団にしたい」が信念。議会改革を進め、議会基本条例や地域医療を守る条例の制定に尽力した。

 西脇病院などの地域医療を守るため、市民運動にも関わった。「地域医療を充実させ、日本一健康なまちをつくりたい」との思いからだった。

 「議会は時に市の政策を変更させるような、深みのある提案ができるようになってほしい」と願う。(金井恒幸)

■外国人材登用に力入れる

 旭日双光章(自動車電装部品会社会長)

  田井三治(たいさんじ)さん(70)=西脇市西脇

 「播州から世界へ」をスローガンに、西脇市や多可町で雇用を生み、地域経済の発展に尽くしている。自動車電装品メーカー田井鉄工の会長を務め、エンジン部品のスターターなどに使われる部品において世界シェア約2割を占める。

 1918年に織物機械の修理業として創業した同社を育ててきた。工場で女性が働きやすいよう環境を整備。外国人材の登用に力を入れ、現在は従業員の3人に1人が外国人だ。東南アジアから優秀な技術者を迎え、人手不足に悩む県内企業へ外国人材を紹介する事業も立ち上げた。

 自動車業界が電動化対応など100年に一度の変革期を迎える中、社長退任後も挑戦を続け、「変化に対応する企業が残る」と先を見据える。(井筒裕美)

■教え子に優しさと厳しさ

 瑞宝双光章(元公立中学校長)

  小路重徳(しょうじしげのり)さん(77)=加西市東剣坂町

 教師生活は30年以上。教え子と真摯(しんし)に向き合った経験則がまなざしに表れる。1971年、高砂市の宝殿中学校で教師人生をスタート。その後は加西市の善防中、泉中、加西中で教壇に立ち、教頭や校長として富田小や宇仁小に赴任した。

 やんちゃな生徒に手を焼いたこともある。しかし「厳しくするときは優しさを、優しくするときは厳しさを胸に秘めておくことが大切」と力を込める。子どもたちの将来を考えて接することが指導の秘訣(ひけつ)という。

 卒業生が教諭となり、同じ職場で働いたこともある。今もつながりを持つ教え子がいるのも誇りだ。

 「年齢は重ねたが、気持ちだけは若く強くありたいね」。柔和な表情で喜びを語った。(村上晃宏)

■臨床検査の精度向上担う

 瑞宝双光章(元加東市民病院臨床検査科長)

  中元邦子(なかもとくにこ)さん(70)=小野市天神町

 臨床検査技師として、旧社町の公立社総合病院時代から加東市民病院に2016年まで39年間勤務。正しい検査結果を報告するための精度管理、ノロウイルスやインフルエンザなどの感染症対策に取り組んだ。

 病院外では県臨床検査技師会の理事を02年度から6年間務め、臨床検査の精度向上や啓発にも携わった。同技師会の依頼を受け、県の精度管理専門委員として検査センターの精度管理の向上を目指す仕事も担った。「大切なのは精度管理」だといい、患者の状態を的確かつ迅速に伝えられるよう後進を指導した。

 「上司やスタッフに恵まれた」と感謝。後輩には「機会を与えられれば、辞退せずに生かして。自分の世界が広がる」と背中を押す。(坂本 勝)