自民、立憲民主、日本維新の会など与野党6党が、ガソリン税に上乗せされる暫定税率の12月31日廃止で合意した。軽油引取税の暫定税率も来年4月に廃止する。参院選から3カ月を過ぎ、物価高などを受けた経済対策がようやく動き出した。
高市早苗首相は、暫定税率廃止法案や電気・ガス料金への補助、所得税の基礎控除額引き上げ、公的医療施設の経営難対策としての補助金などを盛り込んだ2025年度補正予算案を臨時国会に提出する。
所信表明演説で首相は「戦略的な財政出動」を掲げ、代表質問で「新しい財源調達の在り方は前向きに検討している」と答弁した。少数与党下で野党から歳出拡大の圧力が高まるのは必至なだけに、安定財源の確保策を急ぎ議論せねばならない。
暫定税率廃止はガソリン消費の増加につながり、世界的な脱炭素の流れに逆行する。国と地方で計1・5兆円の税収が減る点も問題だ。
自民、維新両党は代替財源として、年内に法人税の優遇措置の縮小や超高所得者の負担強化策を検討する。片山さつき財務相が「租税特別措置・補助金見直し」の担当相でもあるのはその一環と読み取れる。
租税特別措置は、研究開発や環境対策など国の政策に結びつく企業などへの減税を指す。23年度は税額控除だけでも計1・7兆円に上り、支援の妥当性が問われる例も少なくない。各省庁所管の補助金も含めて精査し財源とする意図が見えるが、実際に生み出せる額は未知数だ。
首相が掲げる防衛力のさらなる強化にしても、5年間で防衛費を計43兆円増やす現在の計画ですら、財源が定まっていない。維新が掲げる教育無償化なども見据えれば、場当たり的な財源探しでは必要な額を確保できないのではないか。
暫定税率廃止の代替財源を巡る自民と維新の協議では、株式の売却益や配当など金融所得の課税強化も俎上(そじょう)にのぼった。所得が1億円を超えると所得税の実効税率が下がる「1億円の壁」問題の解消にもつながる。老後の生活資金づくりなどに向けた投資には税優遇措置があり、課税強化の対象者は限られる。
法人税本体にも目を向けたい。企業の競争力向上などを理由に減税を重ね、税率はバブル期の半分近くに低下した。24年度の法人の申告所得総額は過去最高水準にあり、税率を再考する局面と言える。
消費税は低所得層ほど負担の割合が高くなる。一方、所得税や法人税は対象や税率を適切に設定することで富を再分配する機能を持つ。安定財源を確保し経済全体を底上げするためにも、高市政権は税制全体の見直しに着手するべきだ。
























