神戸マラソンの魅力と、新コースで行う今大会の注意点などを語り合った上谷聡子さん(右)と新井広憲さん

神戸マラソンの魅力と、新コースで行う今大会の注意点などを語り合った上谷聡子さん(右)と新井広憲さん

 13回目を迎える「神戸マラソン2025」(神戸新聞社など共催)が、11月16日に開催される。今年から明石市の大蔵海岸で折り返し、神戸ハーバーランドでフィニッシュするフラットで走りやすいコースに生まれ変わった。本番まで2カ月。第1回大会優勝者の上谷聡子さんと第3回大会優勝者の新井広憲さんに、神戸マラソンの魅力とともに、新コースで行う今大会の注意点などについて聞いた。

■走る人とつながり、豊かに/応援する人が温かい大会

 -マラソン歴と、これまで神戸マラソンの参加は。

 上谷 中学1年で陸上競技を始め、大学2年の時に初マラソンを経験した。以来、24年間で57回フルマラソンを走った。現在、神戸学院大学で教壇に立ち、学生にランニング文化を伝えている。また毎年、関連イベントのランニングクリニックで女性の初心者を指導している。

 神戸マラソンには初回から毎年参加しており、昨年は92位となり、シード枠に入れたので今年も走る。

上谷聡子さん

 新井 私も中学1年で陸上競技を始めた。報徳学園高校では全国高校駅伝で優勝を経験。早稲田大学では箱根駅伝に出場し、中国電力に入社した。4回目のマラソンとなった神戸マラソン(2013年)には会社に志願して出場し、優勝した。翌年引退し、現在は中国電力に勤めながらイベントや学校行事を通じて小中学生を指導している。

 神戸マラソン関連では2015年以降、ランニングクリニックで指導している。

新井広憲さん

 -ランニングクリニックの参加者に伝えていることは。

 上谷 完走するための練習法を主に伝えている。そしてマラソンの楽しさは走ること以外にもある。一緒に走る人とつながって、人生を豊かにしてほしい。

 新井 できるだけ失敗談を多く伝えている。練習し過ぎて調整に失敗し本番に臨めなかったこともある。練習していて、気持ちが乗らないときは休んだ方がいい。スタート地点に立てたら、成功というくらいの気持ちで臨んでほしい。

 -神戸マラソンの魅力はどんなところに。

 上谷 海と山が近い神戸の街の魅力を感じながら走れるところだ。秋口に練習で海沿いの国道2号を走っていると、同じように練習している人とすれ違う。お互いに会釈したり、アイコンタクトしたりできるのが心地よい。震災からの復興を象徴してランナーが着ける黄色い手袋を、他の大会でも着けている人を見るとお互い笑顔になれる。神戸マラソンが文化として根付いているのを感じる。

 新井 私自身、沿道の人が冷却スプレーを貸してくれたことがあって、応援してくれる人たちの温かさを感じられる大会だ。完走率が高いのも、そうした応援のおかげなのではないかと感じている。

第11回大会(2023年)を走る上谷さん

■日中に汗かき走る練習を/前半から飛ばし過ぎずに

 -今年から新コースに変わる。

 上谷 一番楽しみにしているのは、神戸の街の象徴でもある神戸ハーバーランドのモザイク前がフィニッシュになっていることだ。気持ちよくフィニッシュを迎えられるのではないか。コースについては、終盤の神戸バイパスの上り坂がなくなるのは残念だが、その分、完走率も上がって、タイムも短縮できる可能性が高く、ランナーの期待は大きいのでは。

 旧コースでは、終盤の上り坂のために体力を温存しておきたいという意識があったが、新コースでは序盤から自分のペースで走れるのではないか。ただそれだけに気負い過ぎないでほしい。スタート時の自分の体調、気象の状況を踏まえながら、設定した目標タイムにとらわれることなく本番に臨んでほしい。

第3回大会(2013年)で優勝した新井さん

 新井 走りやすいコースに変わったことで、大会記録(男子2時間8分46秒)がどこまで更新されるのか、わくわくしている。今回、「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」シリーズに加盟したことにより、これまで以上にトップクラスの選手の参加が期待できる。すれ違う時、一流選手のスピードを体感してほしい。

 上谷さんも触れたが、前半から飛ばしたくなる気持ちは分かるが、落ち着いて走ってほしい。

 -本番に向けて、どのような準備をすべきですか。

 上谷 最近の神戸マラソン開催日は暑くなる傾向が強い。暑くなることを想定した対策を今からしておくべきだ。例えば、いつも朝や夜の日が出ていない時間に走っている人は、9月末くらいから週に1回は昼間に走って、太陽の下で汗をかいて走ることに慣れておくのがよい。本番では太陽の下で6、7時間走ることになるので、準備を怠っていると、疲労感を感じやすくなる。

 新井 本番を想定した練習をしておいてほしい。例えば、給水所で受け取った紙コップの水を飲むときは、一気に流し込むと、むせてしまうことがある。私はコップをつぶすようにして持ち、少しずつ流し込むようにしている。エイドステーションの食べ物を走りながら食べるのも難しい。当日起こりうることを、一つずつつぶしておくことが大切だ。

 上谷 新コースでは、中の島交差点から兵庫ふ頭に入って折り返すあたりがランナーにとってかなりきつい箇所である。沿道からの声援がランナーの最後の後押しになるので、応援場所を迷っている方は、ぜひ兵庫ふ頭付近で応援をお願いしたい。

女性初心者向けランニング教室で講義する上谷さん

ランニングクリニックで参加者たちと一緒に走る新井さん(右奥)

うえたに・さとこ】神戸市西区出身。押部谷中、兵庫高、神戸学院大卒。フルマラソンの自己ベストは、2時間33分55秒。2020年から同大共通教育センタースポーツサイエンス・ユニット准教授。

あらい・ひろのり】神戸市灘区出身。上野中、報徳学園高、早稲田大卒。中国電力入社後の2011年、シカゴ・マラソン8位。マラソンの自己ベストは2時間12分27秒(11年びわ湖毎日マラソン)。

女性初心者向けランニング教室の参加者たちと上谷さん(前列中央)

箱根駅伝を走る新井さん。4年連続の出場を果たしている