先進技術を防災や災害時に生かす「防災DX(デジタルトランスフォーメーション)」が広がっている。阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、行政は迅速な情報収集と共有を図るシステムを進化させる。住民が避難情報を直接受け取るアプリの提供など、防災DXに力を注ぐ企業もある。きょう9月1日は「防災の日」。災害が頻発、激甚化する中、防災・減災力を高める兵庫県内の備えを取材した。(田中宏樹、井沢泰斗)

■神戸市、「阪神・淡路」を教訓に「防災DX担当」新設 迅速支援へ避難名簿をデジタル化

入庁2年目だった阪神・淡路大震災を振り返る加古裕二郎危機管理監=5日午前、神戸市役所

 神戸市は本年度、災害対応を担う危機管理局に「防災DX担当」を新設した。背景にあるのは31年前の教訓と、いまの自治体を取り巻く環境だという。

 街から上る黒い煙、至る所で建物が壊れ、風景は一変していた。避難所は廊下まで毛布にくるまった被災者で埋まり、掲示板には家族や知人への伝言を記した張り紙が並ぶ。

最大震度7の激震は兵庫県南部に大きな被害をもたらした=1995年1月17日、神戸市長田区

 「本当に『どうしたらいいんや』という気持ちでした」。震災時は入庁2年目で、避難所運営や建物の被災調査などに当たった神戸市の加古裕二郎危機管理監(57)が振り返る。神戸・阪神間や淡路島にかけて甚大な被害が発生し、全容把握は困難を極めた。

 あれから31年。神戸の街は復興し、日本は数多くの災害を経験。その教訓を引き継いできたはずだった。

 7月28日に発生した熊本地震。被災地の様子を伝えるニュース映像には、かつての神戸と変わらぬ状況が映し出された。雑魚寝の避難所、人手不足で集積所から運び出せない物資…。

屋外で避難生活を送る人たち=神戸市灘区中郷町5

 「阪神・淡路-では、物資のバケツリレーも『助け合い』を象徴する光景だった。でも人口減少社会において職員や地域の担い手が減っていく中、同じやり方を続けてはいけない」

 市がDX化を目指す防災施策は多岐にわたる。例えば新たに整備する「総合備蓄拠点」には、2次元コードを端末で読み取るだけで在庫や発送状況を把握できる仕組みを取り入れる。

 避難所受け付けのデジタル化も検討中だ。従来は避難者把握のため名簿に手書きで個人情報を記入し、それを職員が手作業で集約する必要があった。

仮設住宅入居の当選者を発表する掲示板を確認しに、大勢の人たちが集まった=神戸市長田区寺池町1、兵庫高校

 そこで避難所に入る際や車中泊を選ぶ際などに、マイナンバーカードやスマートフォンなどを使って情報を登録してもらう。誰がどこへ避難し、避難所にどんな支援や物資が必要なのか。データを連携させることで、そうしたニーズの最適化も将来的に可能になる。

 「技術は日進月歩しており、それを活用しない手はない。むしろそうしなければ今後の災害対応は立ち行かなくなる」。加古さんは強調した。

■県フェニックス防災システム 県と41市町、警察や消防と情報を即時共有 スマホ使い収集、地図上で可視化

 阪神・淡路大震災を受けて配備された兵庫県の「フェニックス防災システム」が9月、運用開始から30年を迎えた。大地震や豪雨などの災害時に県と41市町、警察、消防などが専用端末で被害情報を共有でき、自治体間の応援や物資の配分など、迅速な判断につなげる。昨年度からシステムの更新を進め、現場の写真や動画をスマートフォンで登録できる仕様に変えるなど利便性を高めた。