2学期が始まりましたが、学校の人間関係に悩み、つらい思いを抱える子どもも少なくないはず。「生きるのヘタ会?」の9月のテーマは「いじめの苦しみ」です。話していただいたのは、落語家の桂まめださん(56)。上方落語の定席、神戸新開地・喜楽館=神戸市兵庫区=で5日から始まるコンクール「喜楽館AWARD(アワード)2023」に出場する桂さんも中学時代、いじめに苦しんだ一人だそうです。
-どんな小学生でした?
「緊張してオドオドし、しゃべりたいけどしゃべれない。言葉が出るまでに時間がかかり、しゃべろうとすると、みんなは次の話題に移っています。自分に自信が持てませんでした」
-中学時代は?
「中学1年の時、授業中に話していて先生に怒られ、立たされたことがあります。僕は立ったまま泣いてしまった。それから『気持ち悪い』『弱い』と言われ、いじめが始まりました」
「蹴られて泣いたり、ハサミで下着を切られたり。『あっち行け』と言われ、学校にいくのが本当に嫌でした。2学期が始まる時はゆううつ。学校が嫌で、生きるのも嫌で、自殺を考えたこともあります」
-何か転機が?
-「中学の卒業文集で、自信満々にえらそうに、自分のことを書いている同級生がいたんです。それを読んで最初は『なんやねん』と思ったけど、『俺かてできる。俺の何が悪いんや』という気持ちが不思議と湧いてきました。開き直りというか…。高校からはいじめられなくなりました」
-その後は?
「コミュニケーションは苦手なままで、すし屋で働いても11カ月で辞めたり、工場で働いたり…。でも、落語は好きで、素人落語の会で活動していました。緊張するし、オドオドするけどウケたらうれしい。32歳の時、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、桂文福師匠に弟子入りしました」
「失敗ばかり、怒られてばかりでも、『間がおもしろい』『まめちゃんにはまめちゃんの良さがある』と言ってくれる人がいる。自分の弱点も今となっては個性かなと思えます。横(他人)と比べたら悩むけど、自分の人生を縦で見ると、よく生きてきたなぁ、と」
「昨年、長女が生まれました。運送のアルバイトをしながら落語家の仕事を月に何回かし、生計を立てています。中学時代、世の中の色は真っ黒だったけど今はブルー。生きづらいし、ゆううつな日もあるけど、黒ではない。生きてて良かったと思います」(聞き手・中島摩子)